2011-01-01から1年間の記事一覧

近年の自殺者数の増加とデフレの関係について

最後に自殺者数の増加がデフレによるものだという説についても少しだけ考察してみる。 まず自殺者数の推移とインフレ率・GDPデフレータ、名目GDPの推移を並べてみる。 これらのグラフを見ても分かるとおり日本が最初にデフレになったのは1995 年であり、自殺…

近年の自殺者数の急増についての考察 - 2

前回に続き、もう少し日本の自殺率の推移についての話を続けたい。 前回は男性・女性を併せて考察し、1980年の自殺率を景気に中立的な自殺率の基準と考えると2008年の3万人超という自殺者数はこのトレンド上にあり、1980年から2008年までの自殺者数の増加は…

近年の自殺者数の急増についての考察

日本の自殺率は他国と比較し昔からかなり高い部類に入るが、特に1998年以降は3万人を大きく超えており、それまでの水準が2万人から多くて2万5千人レベルであったことを考えると1998年に急激な悪化をもたらす何かが発生したように見える。この増加の原因につ…

若年層失業率の増加とデフレの関係について

デフレの弊害として若年層の失業率増加が挙げられることがある。 確かにデフレが経済を縮小させ続けるなら新たに社会に出てくる若者の仕事が不足し、結果として若年層の失業率増加の要因になるという話は分かりやすいが、そのことを示す実証データが提示され…

責任の所在をうやむやにすれば誰も責任を取らなくてよいのか?

本の題名は忘れたが、自民党(官僚だったか?)について書かれた本で「自民党は狡猾だからこそ嘘はつかない」という指摘に感心した覚えがある。もちろん自民党政権が嘘をついてこなかったかといえば、そんなことは全く無い訳であるが、この「指摘」が意味し…

国債残高と国民の「資産」の関係について

先日のエントリー「国の借金 国民一人当たり722 万円」の意味 では、国債残高のもつ意味について目先のお金の流れの面から考察した。エントリーの趣旨を簡単にまとめると、国債残高は将来的に返済する必要があろうがなかろうが、存在する以上その金利負担(…

「人権派弁護士」と「談合土建屋」、政府に持つならどっち?

少し前に常夏島日記さんで「浜岡原発の停止要請に見る、民主党の本質 」という題で民主党と自民党の本質について、民主党は「民意こそが民主主義」の党、自民党は「自由こそが民主主義」の党ではないかとの考察をされていた。 その考察のまとめでは 両者の違…

あまりに「アウトロー」な民主党政府の原発事故賠償スキームについて

ようやく政府による原発事故賠償スキームの骨子が固まったようであるが、その後の枝野官房長官による金融機関の一部債権放棄に関するコメントや、東電の年金・退職金カットの拒否、国家公務員の給与削減交渉等、まだまだ最終的にどのような形になるか予断を…

リフレ論における「事実」と「解釈」

先日のエントリーではリフレを巡る議論では「理論」と「仮説」を混同した主張が多く見られ、かえって議論を阻害しているのではないかという事を書いたが、それ以前に「事実」と「解釈」を混在させているケースも多く見られるように感じる。 以下はリフレ派の…

能力の遺伝が格差を固定する?

いつも拝見しているwasting time?さんのサイトで、「中世よりも格差が固定されている現代社会」と題して、現代における格差の固定の要因を「能力(や性格)の遺伝」に求める仮説が示されている。 より平等ということはより能力に基づいた社会になっているとい…

「国の借金 国民一人当たり722 万円」の意味

国債残高は増加の一歩を辿っており、2年連続で過去最高を記録。 よくある「国民一人当たりに換算すると」では722万円まで膨らんだようである。 「国の借金」924兆円に 1人当たり722万円財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合わせた「国の借…

東電が免責されないとどうなるか、

福島の原発事故に関する東電の損害賠償については、原子力事業者による損害賠償を定めた「原子力損害賠償法(原賠法)」の例外規定(下記)を適用するかどうかが焦点となっている。 [ 原子力損害の賠償に関する法律・第三条第一項 ]原子炉の運転等の際、当該…

貨幣数量「説」と貨幣数量「理論」について

貨幣数量説は英語では「Quantity Theory of Money」であり、この説を自説をサポートするものと考えている人々の一部(まあリフレ派ということだが)は「貨幣数量理論」と呼びたいようである。 高橋洋一教授も記事や著作の中で かつて、日本でも、このような…

経済における「因果関係」をデータから証明することの困難さについて

経済学、特にリフレ論を巡るネットでの議論を見ていると、過去のデータから経済における因果関係が「証明」されているかのような議論が良く見られるが、このような「証明」は本来非常に困難なはずである。 例えば「Aを増加させればBが増加する」という単純な…

「名目成長」で財政再建できるのか?

高橋教授がZAKZAKで「「経済成長で財政破綻する」財務省理論のトリックを暴く」と題して、以下のような指摘をされている。 この数字にはトリックがある。国債残高は600兆円だ。もしすべて1年債であったなら、金利が1%とすると次の年に6兆円増加して、…

人は幾らまでなら破産せずにお金を借りれるのか?

人は幾らまでなら破産せずにお金を借りれるのか?もちろんそれは収入額、資産等多くのファクターから成り立つのだろうが、ハッキリしているのは事前に正確に評価することが不可能である事であろう。 なぜなら、もし明らかな「破産ライン」が存在するなら、最…

日銀のバランスシートが毀損するとどうなる?? (松尾匡教授の「思考実験」について 2)

前回取り上げさせて頂いた松尾教授の思考実験について、松尾教授ご本人からご指摘を頂き、またエッセイでも取り上げていただいた。 最初に当方の誤解を指摘いただいた部分について書いておくと、前回取り上げた思考実験は、日銀のバランスシートが毀損しても…

松尾匡教授の「思考実験」について

松尾匡教授が「ちょっと思考実験してみよう」と題して、国債の日銀引き受け批判を批判されているが、なにかおかしい。 該当部分を引用してみると。 政府支出資金を作るために、国債の日銀引き受けをするとして、それを「物価連動国債」でやったらどうなるで…

人命は経済的トレードオフの対象となりうるのか?(原発問題について)

福島の原発事故後、原発反対派による推進派への非難は先鋭化しており、原発を推進したこと自体が「陰謀」であり、原発にはなんのメリットも無かったというような意見も散見されるようになっている(以前からか?)。 その様などこにでも発生する「陰謀論」は…

英中銀・キング総裁と緊縮財政について

英国におけるリーマンショック後のリフレ政策(量的緩和)の顛末については、その後の経過がよろしくない為か、リフレ派の論者にはまともに取り上げられることが少ないが、その数少ない言及に於いては、英国の現状の責任を政府の緊縮財政に向けているものが…

日本の非製造業の労働生産性が低い理由

日本経済の問題点の一つは非製造業の労働生産性が他国に比べて低いことであるという説は以前からあり、その原因を非製造業自体に求める論も多くあるが、それは妥当だろうか? 非製造業の労働生産性が低いということはその産業に働く労働者の賃金が高すぎると…

金持ちの子供がより金持ちになれるもう一つの理由

仮に、才能も性格もチャレンジ精神(リスク選好度、効用関数)も全く同じ二人の人間が居て、一方が資産家の子供(A)、一方が貧困層の子供(B)だったとする。二人が住んでいる国は機会の均等が行き届いており、二人は才能に見合った同等の教育を受けることがで…

日銀のウソ??(追記)

昨日取り上げた「keiseisaiminの日記」様のエントリー(日本銀行の資産買入等の基金におけるウソ)に以下のような追記がついていたので、これについても検証してみる。 【追記】 各年債の残存期間は1年以上2年以下としかわからないが、既発の2年債と5,10,2…

日銀のウソ??

リフレ派の「keiseisaiminの日記」様で「日本銀行の資産買入等の基金におけるウソ」と題して、日銀が包括緩和として行っている基金による国債の買い入れが2年債中心になっていることを非難されている。 長めの市場金利を下げることを目的とするならば、現在…

岩本教授の「貨幣数量説と流動性の罠」について

岩本教授のブログで国債の日銀引き受けが起こしうるレジーム転換の影響について、貨幣数量説的な観点から以下の指摘をされている。 「日銀の国債引き受けによってレジーム転換が生じて,マイルドなインフレが実現する」という考え方については,レジーム転換…

日銀の国債引き受けが実現すれば何が起きるか?

まず、このようなマネタイズに手をつければ、一定の円安と国債金利の上昇は避けられないであろう。そしてこの二つは日銀の国債引き受けが行われることが決まれば即日反応があるはずである。(正確には影響の一部は噂の段階で織り込まれる可能性が高い。影響…

宮内庁が量的緩和を発表

4月1日、宮内庁は国民栄誉賞の量的緩和を発表した。 東日本大震災及びその後の原子力発電所の復旧作業に際し多数の国家功労者が生まれたため、宮内庁は過去18人しか受賞者の居ない国民栄誉賞を約2000人に授与することとした。人数については精査中であり…

分かる人にしか分からない金融政策は機能するのか?

最近の二つのエントリー(1,2)に関して、コメント欄でerickqchan様とかなり色々と議論させていただいた。erickqchan様は以前からサムナーの論文やブログを読みこんでおられ、むしろ筆者の誤解に対する様々な指摘を頂いたという方が適切かもしれないが、…

地方分権はどこまで正しいのか  - 既得権 vs 優先権

地方分権について考える際の切り口は数多くあるが、現在を過去に起きた文脈の中で捉えるなら日本が中央集権国家として現在の国の形を作り上げてきたことは無視できないはずである。(特に明治維新以降) 確かに日本の現状は「都市」と「地方」に分けた場合、…

なぜ地方はその地域の税収だけでやっていけないのか?

前回に続き地方分権について少し違う切り口から考えてみる。 日本の都道府県より人口が少なくかつ豊かな国はたくさんあるのになぜ日本の地方はその地域の税収だけでやっていけないのだろうか? 恐らくその理由の一部は税制を独自に決められないことにある。 …