2010-01-01から1年間の記事一覧

日本の公務員の待遇は良いのか悪いのか?

「社会実情データ図録」様の「OECD諸国の公務員給与水準」という図録が発表されたときには現状の公務員待遇に関して擁護派、否定派双方から様々な反響を呼んだ。 図は公務員数の労働人口に対する比率と公務員給与のGDPに対する比率をプロットされている。日…

貨幣への超過需要の意味を効用関数とリアルオプションで考えてみる

デフレは貨幣への超過需要が原因であると説明されることが多い。 だが、そもそも流通する貨幣の絶対量が減ったわけでもないのに貨幣への超過需要が生じるのは何が原因なのだろうか? 一般に貨幣への需要は流動性への選好であるとして、ケインズ経済学では「…

アルゼンチンの事例について(上念氏のTwitterでのコメントに勝手に答えてみる)

先日のアルゼンチンのインフレ抑制の事例について書いた記事に関して、Twitterで上念氏からいくつかのコメントを貰ったようであるが、正直なところ何を批判されているのか良くわからない。 カバロプラン=固定相場制を中心としたインフレ抑制政策 アルゼンチ…

リフレ派の極論に手短かに反駁する - 3

極論(4) 人々が物を買わないのはデフレで将来価格が下がると予測しているからであり、金融政策によって期待インフレ率が上がれば人々は今、物を買うようになる。 期待インフレ率が期待所得上昇率を上回る場合、実際に生じるのは将来の実質所得が低下するとい…

リフレ派の極論に手短かに反駁する - 2

極論(3) 5000%のインフレをたった4年で7.5%へと押さえ込んだアルゼンチンの例(1989 – 1993年)はインフレが人為的にコントロールできた事例であり、デフレ派には都合が悪いらしい。 前半部分(5000%から7.5%)は事実であるが、これは独立した金融政策を放…

リフレ派の極論に手短かに反駁する

いつも文章が長いので今回は一部リフレ派の極論に対して手短かに反駁してみた。 極論(1) 人口動態と経済は関係ない。 合計特殊出生率がずっと10人だった国がある年から突然3人になったとする。 この時、人口自体は成長し続けるが新築住宅着工件数は激減する…

中国への技術流出は防げるのか?

中国の「パクリ新幹線」輸出問題などで、今更ながら技術流出の危険性が取りざたされているが、これは今の日本では簡単には阻止できない問題である。 まず業界単位で見た場合、中国の技術力を向上させることが業界の利益を伸ばすことになるケースでは、むしろ…

経済学的に見れば「貧乏人は故郷を捨てるべき」なのか?

はてなブックマークのホットエントリで「貧乏人は故郷を捨てろ」か。というエントリーが注目を集めていた。(記事自体はもう5年近く前のものらしく、ご本人も不思議がっておられたが) そこでは慶応大学の土居助教授(当時)の「貧乏人は故郷を捨てるべき」…

高橋洋一氏 ニュースの深層「白川日銀「量的緩和」はどれほど効果があるか」について (+追記)

高橋洋一先生が「ニュースの深層(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1528)」において、以下の二つのグラフを示して 通貨量を増やせばインフレを起こせる 人口増加はインフレ率とは関係ない という主張を展開されている。 この二つのデータについてはリ…

デフレと円高、どちらが卵でどちらが鶏なのか?

Economist Intelligence Unit(EIU)が毎年行っている世界の生活費が高い都市ランキングで今年も東京が1位となり、大阪も2位に入った。デフレがこれだけ続いていても日本の物価はまだまだ高いようである。(参照http://www.economist.com/node/13252399) …

英国は「働いたら負けかなと思っている」人々をこれ以上許さないことにしたようです

英国では金融機関の救済等によってもたらされた財政危機を克服する為、これまで聖域であった社会保障にも大なたを振るおうとしている。 もともと英国は北欧ほどではないものの社会保障が手厚く、又、その財源の多くをを税金に頼っており、財政に対する負担は…

英国版リフレ政策(量的緩和)は成功だったのか?

英国の中央銀行であるイングランド銀行(Bank of England : BOE)は2009年3月から約1年間にわたって量的緩和を実施、その規模は3度の増額によって2000億ポンドに及んだ。 そして実質的にその”Printing Money”によって調達した資金で政府は金融機関の救済策…

リフレ派的日本プロ野球復興案

前回のエントリを書いている途中に思いついた話。 一応設定はオレンジが巨人ファン、黒が阪神ファン。 実際のリフレ政策とはあんまり関係のない単なる「ネタ」ですが、、 - 今年の日本シリーズの視聴率はかなり悪かったらしいな。 まあ事前に予想されていた…

経済学者は野球評論家みたいなものではないのか?

筆者は経済学者はプロ野球評論家のようなものだと考えている。プロ野球には選手から、監督、球団、審判、日本野球機構、コミッショナーと様々なレベルの関係者が存在し、各々が深く関連しながら独自の目的を達成すべく努力することで成り立っている。 これは…

「人口とGDP」についての一考察

以前にもリンクさせていただいたがhimaginaryさんの日記の「人口とGDP」という記事は私も非常に興味深く読み、又、自分でも手に入るデータで色々と試してみた。 元記事では総人口の成長率と名目GDPの成長率が連動していることに注目(図1)した上で、総人口…

Quantitative Easing Explained (アメリカの量的緩和について) @Youtube

P.E.Sさんの「QE2について グレッグ・マンキュー」という記事を読んでいたらアメリカの量的緩和についておもしろおかしく説明(批判)する動画が紹介されており、面白かったので適当に訳してみた。 すでにViewも150万件を超えておりなかなか人気のようである…

イスラム教マルクス主義とキリスト教リフレ派 (或いは科学的リフレ万能論者)

クルーグマンが保守派経済学者によるFRBへの公開書簡に対する批判で、反リフレ的?なオバマ大統領の態度を「イスラム教マルクス主義(Sharia-law Marxism )」(参照)と揶揄している。(追記: この部分は完全に誤読でした。保守主義者によるオバマ大統領に対…

量的緩和が誘発するのは「インフレ期待」か「資産バブル期待」か?

先日書いた「リフレ政策の実施には国民の(もしくは多くの経済学者の)間でのコンセンサスが必要である」というのは、民主主義の立場からだけでなく、実効性の面からも恐らく重要である。 アゴラで慶応大学経済学部教授の池尾和人氏がクルーグマンのブログ記…

デフレは本当に日銀の金融政策が原因なのか?

前回の記事で私が「なぜリフレ政策に懐疑的なのか」について書いたが、その前提としての「なぜデフレが起こっているのか?」についての私の考えもここで一度まとめて書いておきたい。私の考えは単純であり、以下の1枚のグラフにほぼ集約されている。 グラフ…

私がリフレ政策に懐疑的な訳 (追記有)

WATERMANさんからコメントでリフレに反対する人はリフレをどう考えているのか?というご質問を頂いたので、何故私がリフレ政策に懐疑的なのかを自分で整理してみた。 私はどうにも考えを整理できないのですが、リフレに反対する人はリフレを何か特別なものだ…

経常収支のインバランスは持続不可能なのか  - 円高への潜在的圧力は何か?

金融日記の藤沢数希氏がアゴラに「持続不可能なグローバル・インバランスが元に戻るということ」という記事を投稿されていた。 内容はタイトル通り、現在の円高は経常収支のインバランスが元に戻っているせいであるというもの。 つまりアメリカが莫大な経常…

「デフレは必ず負ける勝負」という事実が意味するもの

先日のエントリに関してWATERMANさんから まず、デフレは「必ず負ける勝負」という事実を理解しておられますでしょうか。 というコメントを頂き、自分がその事実をどう理解しているかについて考える中で、今更ながらリフレ派の多くは、(そして恐らくは構造…

なぜ人口減少が需要減にだけ効いて、供給減に効かないのか?

はてなブックマークでこのようなコメントを頂いたので少し繰り返しになるがこの点について私が考えていることを簡単なモデルと図で示してみたい。 前提としてある基準年の人口を100、その年から25年間の人口増加率を図1のように仮定する。すると25年間の人口…

統計の日とGoogle Public Data Explorer、 そして経済の均衡について

数回にわたって世銀等の統計データでいろいろと手を動かしてみたわけであるが、ちょうど10月18日は日本の統計の日で、さらに20日は世界統計の日(http://unstats.un.org/unsd/wsd/Default.aspx)だったようである。ちなみにそれぞれの日付の意味は以下の通り…

マネータリーベースの伸び率とインフレ率の関係について

前回のエントリーで最後にマネーサプライとマネタリーベースの変化率とインフレ率の関係についてコメントしたが、紹介されていた世銀のデータベースを用いて自分でも何点かでグラフを作ってみた。 作ったグラフから読み取れた(ような気がする)傾向は以下の4…

「人口減少」責任論についての追記

JCASTニュースを読んでいたら14日の「高橋洋一の民主党ウォッチ」というコラムで先日のエントリー(飯田泰之准教授「人口減少」責任論の誤謬 についての考察 (1))と同じテーマについて論じられていた。視点としては世界各国の実績データから人口減少…

飯田泰之准教授「人口減少」責任論の誤謬 についての考察 (2)

前回に引き続き「人口減少」責任論について、前エントリーでは2000年の消費者物価変化率についてその人口成長率見込みとの相関を一人当たり名目GDPの上位国と下位国に分けてプロットしてみたが、同様のプロットを1990年、及び2005年についても作成した。 (…

飯田泰之准教授「人口減少」責任論の誤謬 についての考察 (1)

以前に当ブログで2回にわたって人口減少とデフレについてのエントリーを書いた(人口減少とデフレについて (1) (2))が、VOICEの10月号に飯田泰之准教授による[データで斬る“俗論・通説”]「人口減少」責任論の誤謬 という記事が掲載されていたことを…

小野善康 「不況のメカニズム」の感想

著者は先日内閣府参与となり名実共に管内閣の経済ブレーンとなった大阪大学教授小野善康氏。菅政権の「増税で景気回復」路線の生みの親でもある。 最初は半信半疑で読み始めたのだが、結果から言えば最近読んだ経済に関する本の中ではトップクラスの面白さで…

通貨発行益とバーナンキの背理法

先日のエントリに続き、バーナンキの背理法についてすこし違った観点(通貨発行益)から考えてみた。通貨発行益に関するよくある誤解は1万円札の原価が約20円であることから、1万円発行(増発)するごとに9980円の利益が出ているとするものである。輪転機を…