日銀のウソ??
リフレ派の「keiseisaiminの日記」様で「日本銀行の資産買入等の基金におけるウソ」と題して、日銀が包括緩和として行っている基金による国債の買い入れが2年債中心になっていることを非難されている。
長めの市場金利を下げることを目的とするならば、現在はゼロ金利であるので当然長めの国債を買わないと効果はない。
では買い入れ対象を見てみよう。
利付国債(残存期間が1年以上2年以下の2年債、5年債、10年債および20年債に限る。)および国庫短期証券のうち、7.に定める入札を実施する日以前に発行されたものとする。
日銀における展望レポートにおいて向こう2年間かけてデフレ脱却する見通しであるのに、2年債で効果が小さくなるのは目に見えている。
それでは、実際にこの半年でどんな保有構成となっているのだろうか。
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高 3月31日現在
2年債 7757億円
5年債 448億円
10年債 800億円
20年債 0億円
つまり金融緩和効果はほとんどないに等しいが、政治的に圧力をうけたためにパフォーマンスとして、基金をつくっただけなのである。
長期の市場金利の低下を図るならば長期国債を買うべきであり、ほとんど2年国債しか買っていないというのは、デフレターゲットのひとつの証左である。
殆ど2年国債しか買っていないのが「ウソ」という事なのかもしれないが、実際の保有残高を見ると、2年国債の内訳は以下のようになっている。
銘柄(2年債) 保有残高 (入札日)
296回債 73 (2010年8月26日)
297回債 1,532 (2010年9月28日)
298回債 1,646 (2010年10月27日)
299回債 472 (2010年11月25日)
300回債 1,034 (2010年12月22日)
301回債 1,500 (2011年1月27日)
302回債 1,500 (2011年2月24日)
日銀が全体として保有している2年債は279回債から302回債までで、基金が保有しているのはほぼその内最近6回分である。信用緩和が発表されたのが昨年の10月5日であるから、基金は既発の2年債のうち、残存期間が2年に近いもの(起債されたばかりの物)を中心に買い入れていることが分かる。
わざわざ2年債から20年債の銘柄別残高を示して2年債が中心になっていることを批判しているが対象を5年債以上の長期国債にしたところで、「1年以上2年以下の国債を買い入れ対象とする」と言う要領内でこれ以上の長期をターゲットにすることはできないはずである。
つまり2年債が中心なのは基金の要領の範囲内で残存期間が長い物を買い入れたという以上の理由はみとめらないということになる。
よって基金の残高の内訳を示してあたかも日銀が要領の範囲内で恣意的に買い入れ対象を短い物に調整していると言うような主張はミスリーディングであるし、そもそも誤りである。日銀は事前に明示している要領の範囲内で、しかも結果としては上限に近い残存期間がほぼ2年間の国債を買い入れているだけであり、「ウソ」をついていると非難されるいわれは無いだろう。
まあエントリーの趣旨としては1年以上2年以下の「長期」では不十分で、もっと大幅に「長期」の国債をどんどん買えということかもしれないが、それはリフレ派の主張ではあっても、日銀の主張ではない。
リフレ派の主張に沿わない運営だからといって「ウソ」だ「パフォーマンス」だと言うのは「批判」ではなく単なる誹謗中傷の類であろう。
先日リフレ派のBewaard氏がエントリーにて指摘されていたが、
誤った日銀批判こそがリフレ政策の信頼性をより大きく傷つけるものとwebmasterは考えています。日銀批判は正しく行っていただきたい、そうでないと、日銀以上にリフレ論者が信頼されなくなってしまう、と指摘することこそがリフレ実現への第一歩であり、過てる日銀批判への批判に躊躇する方が、よほど日銀を利するものではないでしょうか。
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20110401/p1
という指摘は日銀の金融政策そのものに対して批判的な人も十分に考えるべきであろう。