『不安』に働きかける金融政策

前のエントリーでは下図を示しながらアベノミクス開始後に生じた労働力人口や就業者数の減少から増加への反転について、ITバブル崩壊からの雇用回復時にも同じことが起こっており、アベノミクスが無かったら起こりえなかったとは言えないのではないかと指摘…

労働力人口の増加はアベノミクスのおかげ?

選挙戦が始まり、与党がしきりにアベノミクスの成果を喧伝する一方、ネットなどでは「アベノミクスの成果って景気の自律回復と明確に区別できるほどのものでもないよね」という声が高まっているように感じるが、これに対するアベノミクス支持派の反論で目立…

就業者数はなぜ増加に転じたのか

前回のエントリー(「アベノミクスと雇用について」)で、アベノミクスと雇用については支持者が主張するほど明確な関係が見て取れるわけではない点について書いたが、頂いたコメント等をみるに、一番肝心のポイントが伝わっていないようなので、今回は補足…

アベノミクスと雇用について

アベノミクスが期待外れな結果しか残せていないことについてはいまや多くの人々が同意する所となりつつあるが、その一方で今も「アベノミクスは成功したんだ!」と主張する人々が強調するのは雇用の改善である。しかしながらアベノミクス開始以降、雇用が改…

なぜ日本のサービス産業の生産性は低いのか?

諸外国と比較した時の日本の労働生産性の低さはある種の意外感を持って語られることの多い話題であるが、中身を見ると良い意味で?イメージ通りな部分も多い。たとえば、公益財団法人日本生産性本部より発表された「日米産業別労働生産性水準比較」では ・産…

ノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツ教授による量的緩和、マイナス金利評

3月に行なわれた「金融経済分析会合」におけるノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツ教授の提言については「消費税の増税は延期すべきだ」というものが繰り返し伝わってくるが、後日開示された説明資料を読むと、量的緩和・マイナス金利等の金融緩和政…

原油バブル崩壊の経緯と今後の予測について

原油価格については油価100ドル/バレルを超えていた2012年頃に、この価格水準は米国の量的緩和に起因するバブルではないか?というエントリーをいくつか書いた(「米国量的緩和とエネルギー・食料価格のわかりやすすぎる関係について」、「コモデティバブル…

軽減税率導入で最終的に負担が増えるのは誰か?

軽減税率に関する議論が分かりにくい原因の一つは、その影響を論じるにあたり何と何を比較すべきか、という点で議論が錯綜している点にある。 ある人は軽減税率と現金給付を二者択一であるかのように論じるが、前回も書いた通り両者は別に二者択一でもなんで…

消費税増税時における低所得者対策としての軽減税率について

与党間で最終調整が進められているらしい軽減税率については世論調査では支持が多い一方、ネットでは圧倒的に反対意見が優勢な状況になっているように見える。軽減税率は欧米では既に多くの国で採用されており、それが故にどのような弊害が存在するかについ…

20年ぶりの低失業率はアベノミクスの成果?

国内外で「アベノミクスは失敗した」との見方が多くみられるようになりつつあるなか、先日発表になった10月の完全失業率(季節調整値)は3.1%となり、1995年7月以来、約20年ぶりの低水準となった。 確かに雇用は堅調ではあるものの20年ぶりとなると、そこま…

クルーグマンは変節したのか?

クルーグマンの日本論の再考についての議論が錯綜している一つの原因はクルーグマン自身が過去にも主張を微妙に変えてきていることに加え、日本の信者が勝手に妙な論(高橋氏のみょうちくりんな貨幣数量説とか)を付け加えたこと、そしてそれをまとめて批判…

クルーグマンの日本論再考("Rethinking Japan")は何を再考したのか?

リーマンショック後に世界中で繰り広げられた金融緩和がかなり控えめに言っても期待していたほどの効果があげられなかったことについて、推進派、否定派双方からの議論が盛り上がっているようだが、その中、推進派(特に日本のリフレ派)が教祖のような扱い…

ファーストフード店の賃金水準はどのようにして決まるのか?

少し前の話となるが、「ファーストフード店の時給を1500円にしろ」デモを機に、Blogos等に幾つか面白い記事が紹介されていたが、ここでは少し違う視点でこの問題を考察してみたい。 それは「非熟練労働者の賃金水準はどのように決まるのか?」という視点であ…

異次元緩和と原油価格とインフレの関係について

黒田日銀総裁がようやく現実を認めて「2年で2%」目標を事実上撤回したわけだが、その理由として「エネルギー価格の下落」をあげた事に対し、リフレ派の高橋洋一氏がお得意の(?)データ分析を駆使して「原油価格の物価への影響はほとんど無視できる。2%が達…

減り続ける企業数について

前回のエントリーで述べた 1. 安倍政権誕生前の2012年度の倒産件数もその時点では過去22年間で最低レベルだった。又、そもそも母数となる企業数自体が基本的に右肩下がりとなっている。 という部分に関し、特に「そもそも母数となる企業数自体が基本的に右肩…

安倍首相「倒産件数は24年間で最低」の背景

安倍首相がアベノミクスの成果として株価以外に強調しているのは雇用と倒産件数らしく、演説などでも「倒産件数は24年間で最低」 「民主党政権時代よりも2割、倒産を減らしている」とその成果を繰り返しているようだが、この成果を考えるにあたっては少なく…

アベノミクス景気はいつ減速しはじめたのか?

日本は2012、13年と続けて経済成長率1.4、1.5%と年次で見ればまずまずの成長を遂げてきたが、足元では2四半期連続のマイナス成長と全く勢いをなくしてしまっている。その原因については消費税増税とされることが多いが、一方で景気の減速自体は既に2013年第…

アベノミクスと輸出の推移について

先日のエントリーでアベノミクスによる輸出押し上げ効果はいまのところ全く期待外れに終わっているとい書いたことに対して「全然期待外れじゃない!」といった批判やデータを示せといったようなリクエストをいただいたので、少しこの部分に焦点を当てて考察…

軽減税率のメリットについて

日本もいよいよ消費税率10%が見えてきて軽減税率導入の是非についての議論も高まってきたようであるが、ネットで見かける議論は軽減税率のデメリットについて論じているものが殆どで、そのメリットを改めて論じているものは非常に少ない気がするので、実際に…

アベノミクスとトリクルダウンについて

本ブログではアベノミクス開始当初から、「トリクルダウン頼み」だと評価しつつ、更にそれが機能するかどうかは疑問であると懸念を呈してきた。(以下の引用内の太字は筆者) 2013-5-18 リフレ政策とトリクルダウン理論について 先日のエントリーでは「黒田…

アベノミクス最大の誤算は?

7−9月のGDPが発表され市場の期待を大きく下回る結果となった。 多くのエコノミストの予想が2%、或いは3%を大きく超えるようなプラス成長であったのに対して、現実はマイナス1.6%と散々なものであったわけで、ちょっと記憶にないくらいのかい離があった。そ…

原油価格急落の原因は?

2014年半ば以降、原油価格の下落が著しいが、その原因についてMarketHackさんで「原油価格75ドル割れを巡る迷信 シェールが成功し過ぎているからこそ、価格崩壊が起きている」というエントリーが掲載されていた。 その概要を抜粋させてもらってざっとまとめ…

量的緩和でインフレリスク上昇 は杞憂だったのか?

米国の量的緩和が終了の見込みとなり、「量的緩和を行えばインフレリスクが高まる」という懸念はやはり杞憂だった! という主張がよく聞かれるようになってきた。 筆者も以前から量的緩和のリスクとしてインフレへの懸念を挙げていたが、これが杞憂に終わっ…

日本人の「幸福度」が低い理由は?

Blogosさんで最近「日本人の「幸福度」は先進国で最下位 「幸せはお金で買えない」国民性なのか」、「日本は不幸か?」の「幸福度」に関する二つが記事が掲載されており、なかなか興味深い考察が行われていたので、便乗してみる。 はじまりは毎年アンケート…

リフレ派は現状をどう何を考えているのか?

金融緩和関連(リフレ政策関連)のエントリーを書くと、リフレ派と思われる人々から批判的なコメントをいただく事が多いが、今回は「いつも間違った答を出す人」というタイトルで「自分のあずかり知らないことについて、もっともらしい語り口でデマを流し、…

歓迎される金融緩和から批判される金融緩和へ

10月31日、黒田日銀が異次元緩和第二段を発表するとともに政府はGPIFの株の運用比率を引き上げる改革案を承認したことによって円急落&株価高騰の派手な動きを見せる事になった。 先日のエントリー(「為替トレンドはこれからどちらに向かうのか?」)では、…

クルーグマン教授は誰に謝るべきか?

クルーグマン教授がバブル崩壊以降の日銀の金融政策を痛烈に批判し続けてきた事は有名であり、「白川日銀総裁を銃殺すべき」とまで言ったとされているが、そのクルーグマン教授が「日銀に謝りたい」と言ったとかいう記事が注目を集めている。 クルーグマン教…

為替トレンドはこれからどちらに向かうのか?

先日のエントリーでは常に「もっと円安を!」と叫び続ける円安中毒な人はともかく、普通に見れば円安はかなり進んでおり、実質実効為替レートで見れば1985年のプラザ合意後の最安値圏内に既に突入していると指摘したが、とりあえず足元では急速に進みすぎた…

プラザ合意後の最安値に近づく実質実効為替レートと拡大する交易損失について

タイトルでほぼ言い尽くした感があるが、一応関連データを示しながら考察してみる。 まずいつまでたっても「円安になっても輸出が伸びず、景気も悪いままなのは水準的にまだまだ円高だからだ!円安が足りない!もっと円安を!!」と言い続けている人も多いよ…

シェール革命はどこが革命的で、なぜ巨額の損失をだしてしまうのか?

先日発表された住友商事の米国シェールオイル案件での1700億円もの損失(減損)はマーケットに大きな衝撃をもたらしたが、シェール案件での巨額の損失計上はこれが最初ではないし、おそらく最後でもないだろう。 少し調べればわかるがここ数年だけを見ても他…