2011-01-01から1年間の記事一覧

スイス中銀の為替シーリングと日本での為替シーリングの可能性について

長らくフラン高に苦しめられてきたスイス中銀がとうとう奥の手中の奥の手、為替シーリングに乗り出した。スイス中銀は6日、今後、一段のスイスフラン高を抑制するため、1ユーロ=1.20フランを下回る水準を容認っせず、無制限に為替介入を行う方針を示し、こ…

均衡的な為替水準と「経常収支+資本収支=0」式について

順番が逆な気もするが為替関連のエントリーを幾つか書いたついでに、筆者が為替についてどう理解しているのかについても書いておこう。 まず為替レートという価格には二つの面がある。 すなわちAB二国の通貨間の為替レートは (1) 資産価格の面:A国の通貨建…

「クルーグマンによるFRB評」補足

前回のクルーグマンによるFRB評について で、バーナンキの言うように期待に働きかける手段(FRBに出来ること)はいっぱいあり、まずバーナンキは量的緩和という手をとった。それを見ていて、イマイチ効果が弱そうなので、ウッドフォードは将来の政策パスの表…

「学術的な議論、現実における帰結」- クルーグマンによるFRB評 (翻訳)

クルーグマンがFTでFRBの金融政策(QE2)についてのエッセイを掲載していたので翻訳してみた。 学術的な議論、現実における帰結(理屈っぽい) Academic Debate, Real Consequences (Wonkish) http://krugman.blogs.nytimes.com/2011/08/26/academic-debate-…

円高を活かすということ

円高で倒産件数が増加しているというニュースがある一方で、円高を活かして資源獲得に乗り出す企業や海外に活路を求める企業のニュースも多く見られる。 これらは個別の動きではあるが、全体としてみれば当然予測されることとも言える。 日本は社会資本が蓄…

本当に今が「過度な」円高だと思うなら海外資産に投資すればどうか?

日本では円高になるたびに政府に円高対策を求める声が上がるが、こういった議論を聞いていていつも思うのは、もし今が「過度に」円高だという事に自信があるのであれば、そういう人は外貨建て資産をどんどん買うべきではないだろうか?ということである。 そ…

米国経済"回復"の嘘 (Recovery, what recovery?)

Richard Wolffマサチューセッツ大学教授によるguardian.co.ukの記事(7/28)の翻訳。http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2011/jul/28/useconomy-economics "Recovery, what recovery?" Richard WolffThe plain fact is that corporate profit…

財政問題に関する自己成就的危機の可能性について

ユーロ圏での相次ぐソブリンリスクの顕在化は世界経済における不安要因の一つとなっているが、その中でも特にイタリアのソブリン危機については状況が若干特殊であり、個人的にクルーグマンがどのようなコメントをするかに興味をもっていたのだが、幾つかコ…

円安政策に関する重商主義的誤謬について

一週間ほど仕事で海外に出ていたらその間に前回のエントリー(「円高のメリット」)に対して 忙しいのと、都合の悪い話には反応しないので○○らしくなったのとでしばらく来てなかったが、久しぶりに見てもまたとんでもないトンデモ論を書いているなあ。 と、…

円高のメリット

世間(特にネット)では円高によるデメリットが非常に深刻に受け取られており、その風潮に逆らって円高のメリットを唱えると「何も分かっていない」と言わんばかりの批判を受けることが多い。 というわけで、今回は円高のメリットについて考えてみたい。 そ…

税収弾性値 「4」 の意味

現在進められている財政再建・増税を巡る議論では様々な意見が見られるが、その中でも金子洋一議員や高橋洋一教授は過去15年の税収のGDP弾性値の平均が「4」であることに着目し、名目成長4-5%が達成できれば財政再建は可能であると主張されているので、少し…

チーターとガゼルの話

チーターは地上最速の短距離ランナーとしての名声を不動のものとしているが、その獲物であるガゼルも又短距離ランナーとしては動物界屈指のスピードの持ち主である。 もちろんこのことは偶然ではなく、自然淘汰によって両者の足が遅い固体が淘汰されていった…

経済財政報告における人口デフレ論の検証について

先日公開された平成23年度 年次経済財政報告では「第2節 物価動向と金融資本市場」の中で、人口動態が物価に与える影響について特別に「2人口動態と物価」として取り上げ、検証を加えている。 2.人口動態と物価 我が国のデフレ基調が続くなか、マクロ的な需…

「リフレ先進国」韓国の現在

英国、米国と書いたので、ついでに韓国についてももう一度書いてみる。韓国については以前に「リフレ政策は本気で「韓国」を目指す気なのか!?」でも書いたが、リフレ派的にはなかなか評価の高い国である。 前回取り上げた原田泰氏だけでなく飯田泰之氏も韓…

QE2(米国版量的緩和)は何を解決したのか?

リフレに関する議論ではイギリスの量的緩和は予後がよろしくない為か、米国の量的緩和(QE1/2)を成功例として挙げる議論が多いように見受けられるが、QE2は何を解決したのだろうか? 各種統計データを単純に見た限りにおいては、QE2が成しえたのはインフレ率…

イギリスはスタグフレーションに突入するのか?

英中銀の金融政策委員会の委員であり、只一人量的緩和再開を主張し続けているポーゼン氏が、イギリスの現状は1970年代と大きく違うため金融緩和を続けても現在のインフレがスタグフレーション化する恐れは低い、むしろここで金融引き締めに転じることこそが…

石油危機と原子力発電について

原子力発電が推進された背景として第一次、第二次の二度の石油危機は無視することができない。 例えば以下は、前回紹介した反原発派によく参照される大島教授の試算による各発電コストの推移であるが、このグラフにおいて発電コストの高さで目立つのは「経済…

揚水発電は本当に原発の付属物なのか?

先日のエントリーは原発を含むエネルギー問題はそもそも人類が本当に長期的な視野で考えなければならない問題であり、発電コストが数円高いとか安いといった目先の経済合理性の観点で考えるような問題ではないという趣旨で書いたわけであるが、一方で前回取…

原発の経済合理性はゼロ?

東洋経済オンラインに6月21日付で 「原発「安価」神話のウソ、強弁と楽観で作り上げた虚構、今や経済合理性はゼロ」という記事が掲載されており、その中では福島の事故以来一部の人間が主張してきた「原発の発電コストは本当は火力よりも高く、そもそも経…

誰が原子力エネルギーを使うべきか

福島の事故以来、反原発の世論はかつてないほど高まっている。 原子力発電には事故コストも含めれば経済的合理性が本来なかった、市場原理に従っていれば今回のような事故は起こらなかった、という意見は確かにその通りかもしれない。 しかしもともと原子力…

量的緩和終了後の英国にプランBはあるのか?

足下の高インフレにも関わらず今回も英国の政策金利は据え置きとなったが、それを責める声はそれほど大きくはない。 なぜなら現在の状況下で英中銀にやれることは限られているということを多くの人が理解しているからである。 そもそも英国が量的緩和で行っ…

英国経済復活への道筋?

先日(22日)、英国中央銀行金融政策理事会(MPC)が行われ、0.5%の政策金利の据え置きが決定されたわけであるが、従来より金利の正常化を主張していたタカ派のセンタンス理事が退任になったことから、何か変化があったのか少し興味を持ってぐぐって見たところ…

金融政策とそのリスクに対する見方の違いについて

コメント欄でyasu様からリフレ政策を支持する視点から多くの興味深いコメントを頂き、あちこちのエントリーで散発的にコメントをやり取りさせていただいたが、その中で金融政策のあるべき姿やリスクについてやり取りした内容をまとめてみたのだが、コメント…

QE2の効果と雇用なき景気回復について

前回のエントリーではQE2後の米国の個人消費の増加が景気回復を牽引しているのかどうかについて疑問を呈したが、それ以外の部分ではQE2の効果として挙げられているものは概ね予測通りと言える。 ここでQE2の効果として挙げられているのは デフレ回避 ドル安 …

米国の個人消費って回復してるの??

クルーグマンがブログでQE2の波及メカニズムについて検討を加えている(参照)のを、「クルーグマン経済学の翻訳ブログ」様で読ましていただいた(参照:量的緩和の伝達メカニズム(オタク風))のだが、その中で気になったのは米国経済の回復を個人消費が牽引…

輸入デフレ説は本当に初歩的な誤解なのか?

輸入品価格の下落が日本におけるデフレの構造的要因の一つではないか、という説に対するリフレ派の典型的な批判は「相対価格と絶対価格の差が分かっていない」というものである。その指摘の次には往々にして「そんな基本的なことすら分かっていないとは、・…

市場の需給ギャップは2003年頃にはほぼ解消されていたのではないか?

前回のエントリーでは大雑把に言えば日本の膨大な需給ギャップ(と呼ばれてきたもの)の要因は人口動態による耐久消費財の需要減と日本が豊かになっていく中で国際競争力を失った国内産品に対する構造的な需要減であり、又、ある特定の市場に於ける需給ギャ…

埋めるべき需給ギャップはどこにあるのか?

日本経済について議論を行う際に重要なキーワードとして出てくるのが「需給ギャップ」である。 日本には埋めるべき膨大な需給ギャップがあるらしいが、勿論その分だけ毎年在庫が積みあがっていっているわけでは無い。要は潜在的な供給能力に対して実需要が少…

「消費税増税」の意味

消費税増税が現実味を帯びてきたことで、消費税の是非についての議論が再び活発化しているようである。 どのような税負担が公平か?という問題については価値観の問題と密接に絡んでおり、議論して答が出る話では無い気がするが、その様な価値観の違いがあっ…

不信任案否決という茶番劇について

鳩山氏「首相はペテン師」「不信任案賛成すれば良かった」 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110603/plc11060310470009-n1.htm 見事なまでの茶番劇、、、 私怨にしか見えない、鳩山前首相の不信任案の支持と、採決直前の腰砕け。 それを見た小沢氏、…