「人権派弁護士」と「談合土建屋」、政府に持つならどっち?

少し前に常夏島日記さんで「浜岡原発の停止要請に見る、民主党の本質 」という題で民主党と自民党の本質について、民主党は「民意こそが民主主義」の党、自民党は「自由こそが民主主義」の党ではないかとの考察をされていた。 その考察のまとめでは

両者の違いはあくまで手段の違いです。目的は、マジョリティである国民の希望に沿うこと、そこに違いはないと思われます。

とされていたが、きれいにまとめすぎな気がしたのでもう少しひねた視点で両者の違いを考察してみた。


まず両者に共通するのは政権を取り、維持しようという権力志向であり、その為に民意を意識しているのは間違いない。民意を意識する以上、表面的な政策が似てくるのはある意味必然であるが、その上で、両者に違いが生じているのは権力を使って実現しようとしているもの、つまり各自の「正義」に違いがあるからではないかと筆者は考えている。


ではその「正義」が何かといえば、思いきり乱暴にまとめるなら、自民党の正義は「身内の和(利益)」を守ることであり、民主党は「人権(と彼らが信じるもの)」を守ることであるように見える。 例えるなら自民党が「談合土建屋」で、民主党が「人権派弁護士」といったところか。 (言うまでもなく単なる筆者の印象であるが)


例えを単純に比較した場合、一般社会においてより正しいのは「人権派弁護士」であるのは間違いない。 談合は犯罪であるし、一方で人権は普遍的な価値と考えられている。


但し、国家を率いる政府としてどちらが良いかという視点に立てばその優劣はそれほど簡単ではない。


談合は確かに違法であるし、その「身内」に入れなかった人間から見れば不公正でもあるが、そもそも政府というのは国民という「身内」の利益を最大化することが使命である。 

自民党に問題があったとすれば(というか恐らくはあったのだが)、国民の中に更に「身内」をつくり、その身内の中に有力議員が更に個別に「身内」を作ってそれぞれの「身内の和(利益)」を重視した結果、国民という本来の「身内」の利益の最大化がないがしろにされたケースが多かったことだろう。 

それでも日本全体が成長している間は、「身内」からのトリクルダウンもあり、それなりに機能してきた。しかし経済成長が停滞したことによりその歪みが徐々に顕著になり、一番の「身内」であるはずの党内で仲間割れも起きたりして民主党に政権を明け渡すことになった。(ちなみにこの場合の自民党の「身内」の正体については大きくは産業界、更に個別には輸出製造業界、土木業界、電力業界、郵政等が当てはまるだろう)


ではそのような「身内」の論理を排除し、より普遍的な価値と彼らが考える「人権」を守ることを正義とする民主党はより「正しい」政治をもたらしただろうか?


実績のみを見れば(そして現在の政権支持率を見れば)民主党が自民党よりうまくやっているとは言いがたい。 その原因としては政権運営のノウハウや人材が不足していることもあるだろうが、野党時代に自らが唱えてきた「正義」と与党として国家を担って行うべき政策との間の方向性のずれも原因の一つではないかと筆者は考えている。


対内的に与党・政府の重要な責務は法律を作ったり政策を施行したりすることによって、社会の最適化を図ることであるが、「人権」という普遍的な「正義」が社会全体の最適化よりも重要となれば、結果として社会は最適化されない。 それどころかその「正義」が究極的なものであるなら「法律」にすら優越するようになり、超法規的措置が連発されることにもなる。 超法規的措置によってとりあえず達成される「正義」もあるのかもしれないが、そのような事がたびたび起こると認識されれば、結果として日本全体での国民の利益は損なわれることになる。 


又、対外的にも政府が「人権派弁護士」的であることは障害となりうる。人権は普遍的なものであるが故に、そもそも国益のような特定集団(=日本国民)の利益を守る為の基準としては機能しない場合があるからである。

理想のケースは全ての国が「人権(と彼らが信じるもの)」を相手国の国民も含めて互いに同様の水準で守った上で、各個人間の競争が行われればよいのかもしれないが、それは自国が武装放棄すれば戦争が起こらないという発想と同じであり、理想ではあっても必然でも無く、現実でも無い。国家という枠内での企業・個人間の競争とは違い、国家間の競争はルールの管理者が居ない中での競争であり、正しければ良いというものではないからである

そもそも人権を究極の価値とするなら、特定集団の擁護(=日本人の国益の確保)というものは瑣末な価値しかないことになるし、更に進めれば鳩山元首相のように「日本は日本人だけのものではない」というような発想にも繋がりかねない。


違う言い方をすれば「談合」は談合すること自体に価値があるわけではなく、談合することによって結果として(少なくとも身内の)利益が最大化されることを目的としており、結果重視である。
しかし「人権派弁護士」は人権自体が正義であり、目的である為、目の前の正義を実現することだけに集中し、その為には法の拡大解釈的なことまでやる。 「正義(と彼らが信じるもの)」が先にあり、その「正義」に従うことが重要であり、「正義」に従いさえすれば結果に対する検証は必要ない。 検証などしなくても「正しい」ことをした結果だから「正しい」のである。 (そしてもし結果が明らかに好ましいものでなければ「正しい」事をした自分たち以外に「正しくない」力が働いたということになる。)


さて、タイトルとした「「人権派弁護士」と「談合土建屋」、政府に持つならどっち? 」であるが、あえて選ぶとすれば筆者は「談合土建屋」派である。ただ自民党も従来通りのやり方では例え次の選挙で敵失で政権を取り返したとしても早晩日本の経営に行き詰るだろう。国難の時期にこそ今の日本に必要な新たな「正義」を掲げる政党が出てきて欲しい所であるが、今のところその芽はまだ見えない。少しだけこの動き↓に期待しているのだが、実体はどんなものなのだろうか?

超党派議連、結成相次ぐ…民自連に109人

 民主、自民両党の中堅・若手議員らが超党派の議員連盟を結成する動きが相次いでいる。

 17日には民主党の樽床伸二衆院国家基本政策委員長や自民党の菅義偉元総務相らが議連の初会合を国会内で開き、両党から109人が参加した。両党議員の接近の背景には、「菅降ろし」への決め手を欠く現状への閉塞感があるが、起爆剤になるかどうかは不透明だ。

 同議連の名称は「国難対処のために行動する『民主・自民』中堅若手議員連合」(民自連)。民主党の松野頼久元官房副長官や自民党の河野太郎元幹事長代理ら両党から5人ずつが呼び掛け人を務め、初会合には民主党87人、自民党22人が参加。6月22日までの国会会期の延長を求めていくことを決めた。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/elex/20110517-567-OYT1T01032.html