「国の借金 国民一人当たり722 万円」の意味

国債残高は増加の一歩を辿っており、2年連続で過去最高を記録。 よくある「国民一人当たりに換算すると」では722万円まで膨らんだようである。

「国の借金」924兆円に 1人当たり722万円

財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」が平成22年度末時点で924兆3596億円となり、2年連続で過去最大を更新したと発表した。1年間で41兆4361億円増加し、借金を国民1人当たりに換算すると、722万円となる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110511/plc11051108010012-n1.htm


こういう記事が出ると、「一人当たりを計算することに意味は無い」とか「政府の借金であって国民の借金では無い」とか「国債は国民にとっては資産だ」とか、「財務省の陰謀だ」というコメントが多数書き込まれることになるが、実際の所この金額は何を意味しているのだろうか?


単純に目先のお金の流れだけ見れば「1人当たり722万円」は、1人当たり年間722万円x長期金利60年償還を前提とした元利程度のお金が政府から国債債権保有者に利子として払われているということを意味している。


ちなみに今年の国債費は約20兆円であるからこれも国民一人当たりに換算すれば約15万円程度である。


つまり、この借金が無ければ(そして新規国債発行額を同じとすれば)、平均して一人当たり年間15万円程度の減税が可能となったか、或いは15万円程度の公共サービスが追加で受けれたはずという事になる。

この状況がどんどん進んでいけば、全国民が支払った税金の大半は国債保有者様へと渡り、残った分で賄えるだけの公共サービスしか国民が受け取れなくなる日もやがて来るだろう(それまでに破綻しなければだが(注))。


確かに国債は国民にとっては資産であるが、それは保有者の資産であって、国債を保有していない人間にとってはやはり借金にすぎない。 もちろん個人に返済の義務はないし、未来永劫完済されることは無いから残高の額に驚くことは無いが、日本に住みつづける限り税金と公共サービスの差額として金利は払い続けなければならないわけである。 

すぐに解決できる話では無いが日本が好きで住み続けたい人や海外に移住のあてが無い人はある程度真剣にこの問題を考えるべきであろう。


注)プライマリーバランスを無視して新規国債を増発しつづければ当面は払った税金以上のサービスを受け続けられるかもしれないが、いざプライマリーバランスを達成する必要に迫られた時には国債残高を増やし続けた分だけ税金に占める国債費の割合が増大しているはずである。 


注2) こういう数字を見るとたとえ悪性になったとしてもインフレを起こして借金をチャラにしたい気にもなるが、それをやった後の状態が現状より良いものかどうかはロシア等の経緯を見ると疑問でもある。