2013-01-01から1年間の記事一覧

インフレと金利が上昇すると日本の財政はどうなるのか?

インフレと金利と財政の維持可能性に関する考察は色々な立場の人が主張する「お話」だけを追いかけていてはイメージがつかめない部分があるので、かなり乱暴な部分はあるが頭の体操的に試算を一つ二つ示してみたい。 まず、ある年における日本の財政に関する…

長期金利の上昇はいかにしてアベノミクスを失速させるのか、

前回のエントリーで紹介したリチャード・クー氏の論説と被るが、現在注目を集めている長期金利の上昇がこれからどんどん進んでいった場合、どのような悪影響をアベノミクスに与えうるかについて少し考察しておく。 まず最初にはっきりさせておきたいのは、現…

異次元緩和でもたらされた金利上昇は悪い金利上昇?

異次元緩和後の長期金利の上昇に関しては世界でも断トツの国債残高を積み上げている日本の財政の維持可能性という観点から注目を集めることとなり、様々な主張が繰り広げられることとなった。その中でもクルーグマンはじめとする海外の著名経済学者達による…

財政再建の正当性について

なにやら財政再建があたかも悪い事であるかのように主張するのが一部で流行っているようであるが、財政再建の正当性について一度書いておきたい。 既に原則を説いても仕方がないくらいの所まで来てしまっているが、財政について法律(財政法)では「国の歳出…

長期金利に簡単に上昇してもらっては困る理由

黒田日銀の異次元緩和で目標として挙げられた波及ルートの内、「長期金利の引き下げ」についてはあまり上手くいっていない事は既に多くの人にとっては明らかだろう。 この問題については、黒田総裁が異次元緩和後の会見(参照)で記者 「1 点目は、本日、一…

遠くて近い?日本財政破綻への道

長期金利に関する懸念ついて書いたついでに、日本の財政問題自体についても少し書いておきたい。 とはいってもこのテーマについては2年程前に幾つかエントリーを書いており、考察のベースになる部分については現在も変わっていないので、まずは前回のエント…

長期金利を「長期的観点」だけから判断しても駄目な件について

最近、為替、株価、長期金利共に神経質な展開が続いているが、前にも書いたとおり「異次元」な金融緩和で、「壮大な実験」をやってるのだから、以前のような安定した相場が期待できなくなるのは当たり前であり、今さら目先の変動で騒いで見ても始まらないだ…

資本主義とトリクルダウン理論について

資本主義では金持ちが益々金持ちになっていくというのは今では多くの人が実感・同意するところだと思うが、「経済学の父」と呼ばれているアダム・スミスも既にそうなる可能性については気づいていたように思われる。しかしながらアダム・スミスはそれでもや…

リフレ政策とトリクルダウン理論について

「トリクルダウン理論」はそれなりに名前を知られている理論ではあるが、意外と内容は知られていないもののようでもある。 その簡単な説明をwikipediaから引用すると トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、trickle-down theory)とは、「富める者が富…

長期金利上昇で明らかになってきた異次元緩和のの「トリクルダウン」頼みの波及ルートについて

ここ数日、長期金利が急上昇したことで財政破綻だなんだと焚き付けている人がいるようだが、依然1%を切る水準である事には変わりなく、財政破綻を語るにはやや気が早いように思われる。リスクが高まっているとは言えるかもしれないが、「異次元」な政策を打…

国家にとってのグローバル企業とは何か?

内田樹氏の「壊れゆく日本という国」という朝日新聞への寄稿で展開されている「グローバル企業」論は納得できる部分も多い反面、ややグローバル企業を一面的に捉えすぎているのではないかと感じたので、少し筆者も考察してみたい。 まず筆者は、グローバル企…

日本のデフレ「不況」とは何だったのか?

先日のエントリー(「なぜ日本だけがデフレになったかを少し考察してみる」)では何故日本だけがデフレになったかについて考察してみたが、今回は日本のデフレ「不況」とはなんだったのかについて考察してみたい。 この二つを分けてエントリーにしていること…

金利平価説と円高トレンドについて

前回のエントリー(「なぜ日本だけがデフレになったかを少し考察してみる」)に対していただいたコメントの中で金利平価説に対する疑問が多かったので少し補足してみたい。 まず金利平価説についてそのままwikiから引用すると以下の通りとなる(太字は筆者)…

なぜ日本だけがデフレになったかを少し考察してみる

なぜ日本だけがデフレになったかという問題については本ブログでもこれまで断片的に書いてきたが、整理も兼ねて筆者の考えを一度まとめて書いておく。 カンタンにまとめるなら、なぜ日本だけがデフレになったかといえば1. 米国を中心に先進国全体として経済…

年収100万円時代はユニクロにとっても致命的?

前回のエントリー(「柳井氏の「年収100万円」発言について − 日本の中流層はこれからも中流層でいられるのか?」)に対し、「中流層こそユニクロのメインの顧客なのに、それが所得の2極化で毀損してしまっては元も子もないのではないか?」、「所得の2極化…

柳井氏の「年収100万円」発言について − 日本の中流層はこれからも中流層でいられるのか?

ユニクロ柳井社長の「将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく」という発言は、かなりの拒否感を持って迎えられ多くの批判が行われているが、そこでみられる「今の日本では年収100万円は不可能だ」という批判は正しくはあっても、この発言…

「黒い企業を白くします」(ホワイトカラーエグゼンプション)

「ブラック」企業の話を書くと、やたらとその違法性に焦点をあてて論じる人がいるが、そういう人達に朗報?なのが安倍政権がまた検討しているらしいホワイトカラーエグゼンプションである。 今更どういう制度か説明するまでも無いかもしれないが、一応説明す…

柳井氏を批判しても仕方がない理由をもう少し書いておく (ブラック企業/ユニクロ問題雑感)

前回のエントリー(「批判されるべきは柳井氏なのか?」)に頂いたコメントを拝見していると、筆者が柳井氏を擁護しているととられた方が結構いらっしゃったようだが、それは筆者の本意では無いので、少し補足しておきたい。 ある繁華街の近くの住宅街で住民…

批判されるべきは柳井氏なのか? (ブラック企業/ユニクロ問題雑感)

ユニクロの大株主であり社長でもある柳井氏の二つのインタビュー記事が話題を呼んでいる。 「甘やかして、世界で勝てるのか」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130411/246495/?rt=nocnt「年収100万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に…

殆どのブラック企業の将来は超ブラック企業

「ブラック企業が社会を豊かにする」という刺激的なタイトルの記事がアゴラに掲載され、注目を集めている。 タイトルからして釣り狙いにも思える記事だが、まあ折角なので釣られてみる。 著者の主張をかいつまんで引用すると 現在の安定期の企業を見ても、創…

いま進めるべき都市の効率化は地下鉄24時間化なのか?

アベノミクスの一環として検討されているらしい3大都市圏でのバス・地下鉄の24時間運行について、池田教授が「世界の主要都市では当たり前のことだ」とし、その上で日本は都市への人口集中をもっと進めるべきだとの自説を説いておられる(参照:「人口の都市…

なぜ韓国はウォン安政策を推進しないのか?

ここの所の円安トレンドは韓国経済にも影響を及ぼしており、韓国からはアベノミクスの「為替操作」に対する非難が高まっている。まあ今の為替水準は依然金融危機後に安全資産として円が買い進められて円高になった分が完全に巻き戻ったとも言えない水準であ…

金融政策は資産バブルにいかに対応すべきか?

金融緩和の弊害として資産バブルの生成・崩壊のリスクを上げると決まって出てくるのが金融政策は資産価格に反応すべきではないという批判である。 その理由を「Wikipediaにそう書いてあった」という所からもう少し掘り下げると、「中央銀行は物価安定に専念…

黒田日銀の逆「ボルカー」的瞬間

黒田日銀の異次元緩和を、ボルカー元FRB元議長が行った金融引き締め策と対比した記事がいくつか目に付いたが、どうにも違和感がある。 例えば黒田日銀の異次元緩和の直後にでた記事ではエコノミストの人が以下のようなコメントを残している。 三菱東京UFJ…

企業のブラック化と少子化の共通要因について

ここ数回の少子化についてのエントリーで、少子化はポジティブフィードバックの性質を持つという話(参照)と、これによるスパイラル化を少しでも食い止めるには若年・低所得層に再分配して少しでも婚期を早める事が有効では無いかという話(参照1,2)を書い…

少子化の加速を少しでも食い止めるにはどうすればよいか?をもう少し考える

前回のエントリー(「少子化の加速を少しでも食い止めるにはどうすればよいか?」)が意外に反響があったのでコメントに返答する形で、前回書き足りなかった点を付け足したい。 (コメントいただいた方の名前は入れたほうがいいのか悩んだが、複数のコメント…

内部留保の問題点について

近年、決算期になると決まって出てくるのが大手企業の内部留保が巨額だという話題である。 大手企業の利益温存加速 100社調査、内部留保99兆円 http://www.47news.jp/CN/201304/CN2013040701001712.html これを受けての各界の反応は多分に我田引水的な…

少子化の加速を少しでも食い止めるにはどうすればよいか?

少子化について二つのエントリー(「なぜ少子化は悪なのか?」、「マスオさんにみる少子化の要因と少子化対策の重要性について」)を書いたので、ついでに少子化対策についても筆者の考えを書き留めておきたい。 で、いきなりぶっちゃけて言ってしまえば少子…

マスオさんにみる少子化の要因と少子化対策の重要性について

いきなりであるが、読者のみなさまはサザエさんの夫であるマスオさんの本名をご存じだろうか? 有名な話らしいので知っている人も多いかもしれないが、彼は妻であるサザエさんの実家に「マスオさん」してはいるものの養子に入ったわけではないので、「磯野マ…

なぜ少子化は悪なのか? 

こちらの記事(参照)に少々思うところがあったので、「なぜ少子化が悪なのか」について少し書いてみる。 少子化のマイナス面については経済への影響を中心とした解説が多いが、これは移民や出稼ぎ労働等を増やすことでもある程度対応できる話であるし、経済…