リフレ派の極論に手短かに反駁する - 3
極論(4) 人々が物を買わないのはデフレで将来価格が下がると予測しているからであり、金融政策によって期待インフレ率が上がれば人々は今、物を買うようになる。
- 期待インフレ率が期待所得上昇率を上回る場合、実際に生じるのは将来の実質所得が低下するという予測である。
- 将来の実質所得が低下するという予測が現時点における消費を喚起するとは考えにくい。
- これは現金資産を保有している人間にとっては、実質資産価値と実質所得が共に低下するという予測であり、やはり消費を喚起するとは考えにくい。
- 逆に借金がある人間にとっても、所得の上昇が金利上昇による返済負担の上昇を上回るという確信がなければ2重に実質的な可処分所得の低下が予測されるためやはり消費は喚起されない。
- つまり「期待」で現時点に於ける消費を喚起するには少なくとも実質所得が上昇するという「期待」が必要であり、インフレ率が上昇するという「期待」だけでは人々が今、物を買うようにはならない。
(補足1)一方で実質資産価値を維持するために現金や低金利の国債からより高リスク(インフレ連動)の商品(株・土地・為替)への資金移動は喚起されると予測されるため、国債価値の下落と一部資産価格の高騰が起こる可能性は高い。
(補足2)ちなみにイギリスの量的緩和の例では(少なくとも短期的には)物価上昇率>所得上昇率、金利上昇率>所得上昇率となっている。
[参照]
リフレ派の極論に手短かに反駁する
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20101214/1292352197
リフレ派の極論に手短かに反駁する -2
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20101216/1292498456