イスラム教マルクス主義とキリスト教リフレ派 (或いは科学的リフレ万能論者)

クルーグマンが保守派経済学者によるFRBへの公開書簡に対する批判で、反リフレ的?なオバマ大統領の態度を「イスラム教マルクス主義(Sharia-law Marxism )」(参照)と揶揄している。

(追記: この部分は完全に誤読でした。保守主義者によるオバマ大統領に対する批判(隠れイスラム教だとか、マルクス主義だとか)を指していて、相容れない二つを繋げることで皮肉っているようです。そもそもアメリカが進めているのはリフレ的な量的緩和ですのでおかしいとは思ったのですが、クルーグマンは今の政策でも不十分と見做しているというイメージが強かったのでつい我田引水的な解釈をしてしまいました、、反省。 誤読さんコメントありがとうございました。)

その意図については良く分からない(マルクス主義って唯物論だし、、)がリフレ政策論争を眺めてみるとむしろ宗教的な装いを強めているのは一部のリフレ派ではないかと思われる。

クルーグマンのイスラム教マルクス主義に相対するならさしずめ「キリスト教リフレ派」、あるいは科学の装いをまとっているから「科学的創造論」にちなんで言えば「科学的リフレ万能論」といったところか。

「科学的創造論」とは進化論を否定した上で、”科学的な立場から”神の創造した事象を聖書に基づいて検証する観察”科学”であると論者が主張している「疑似科学」であり、根拠を宗教的信念や聖書に求めていることから「反証可能性」を含んでいない。(参照


宗教的リフレ派の場合、この創造論に当たるものは「リフレ政策の実施がデフレを解決し豊かな将来を創る」という信仰であり、その宗教観の中での悪魔はデフレ、ユダは日銀ということになるのだろうか。
そういった宗教的リフレ派は保守派の経済学者がリフレ政策ではマイルドなインフレ誘導を達成できないという指摘すれば、「デフレ(悪魔)を肯定している」とみなして攻撃する。彼らの”インテリジェントデザイン(ID)”では「デフレは金融政策では解決できない問題である」という可能性は無いわけである。
又、同じ神を信じていてもその解釈が違えば異端として排斥する所や、何かといえば古い経典を持ち出すところもそっくりかもしれない。


但し、一点付け加えるとすれば、経済については進化論ほど確かな理論が存在せず、リフレ論自体は創造論ほど非科学的なものでは無い可能性も有るということは留意する必要がある。よってこの問題については本来であれば両サイドからの科学的なアプローチによって議論を深めることも十分に可能なはずであるが、実際には彼らは布教(プロパガンダ)のほうに力を入れているようである。


ちなみにこのような一部のリフレ派に対する批判はリフレ派?からも出ていて、takekuma1975さんやHALTANさんは以下のような強烈な批判を書かれている。

「科学ではなく、宗教と考えると理解しやすい」
経済教リフレ派と考えると、「いかなる批判も許さん。異端は死ね!」という態度が理解しやすい。無能な味方ほど恐ろしいものは無いと思う今日このごろ。
(takekuma1975の日記http://d.hatena.ne.jp/takeuma1975/20100717/1279369467

「リフレ派(ネットリフレ派)が『TVタックル』『委員会』に出る日」
つまり、リフレ派(ネットリフレ派)はもう完全に「まとも」じゃないってこと。「ダース・ベイダー様が言う事なら何でも正しい」「それに逆らう奴は許さない」という「ダース・ベイダー脱藩官僚教」。
(HALTANの日記 http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20100719)