統計の日とGoogle Public Data Explorer、 そして経済の均衡について

数回にわたって世銀等の統計データでいろいろと手を動かしてみたわけであるが、ちょうど10月18日は日本の統計の日で、さらに20日は世界統計の日(http://unstats.un.org/unsd/wsd/Default.aspx)だったようである。

ちなみにそれぞれの日付の意味は以下の通り。

日本:
この10月18日は、我が国最初の近代的統計である「府県物産表」(注)に関する太政官布告が公布された日 (太陰暦で明治3年9月24日)を太陽暦に換算した日です。

世界:
何故、世界統計の日は2010年10月20日なのでしょうか?
現在「2010年ラウンド 世界人口・住宅センサス」(英語ページへのリンク)が世界223の国・地域で実施されています。国連主導で「世界統計の日」を周知することにより、公的統計の意義を認識してもらい、センサスへの理解が得られることが期待されています。また、英語でこの日を表記すると「20(日)10(月)2010(年)」となり、覚えやすい数字になっています。


それにちなんでというわけではないのだが先日世銀のデータに関して調べているうちにGoogle Lab の 「Google Public Data Explorer」に世銀のデータの一部が含まれていることに気づいた。 まだ使いづらい所も多いがそのポテンシャルはすばらしく、これがもっと使いやすくなれば簡単にいろいろなデータを見ることが出来そうである。


せっかくなので試しにこの機能を使い先日のエントリに関連して幾つかグラフを作ってみた。


1.まずはじめに横軸を一人当たりGDP.,縦軸をインフレ率、色を人口増加率にしたものを作成。 残念ながらインフレ率に関してはジンバブエのような国があるためスケールが大きすぎ、インフレ率をLogに変更してもデータが集中してしまい、はっきりした傾向が見えず。

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2.横軸を人口増加率、縦軸を一人当たりGDP、色をインフレ率にしてプロット。Google Public Data Explorerではサイズも別のパラメータに関連付けられるので、GDP成長率をサイズに指定。 なんとなく傾向が分かる気もするが人口増加率もスケールが大きすぎてデータが密集してしまう。(スケールの変更方法を調べてみたが良く分からなかった。 まだ機能がない??)

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3.人口増加率にかわるファクターとして出生率を選択。 するとかなりいい感じにデータがばらけた。(出生率が平均で5を超えるような国も結構あって驚いた)
このデータをみると日本を始めとする左上(高一人当たりGDPx低出生率)の国々は 低成長率 x 低インフレ率 になる傾向があり、右下へいくに従って高成長率x高インフレ率になっていく傾向があるように見える。(但し右下の国はばらつきが大きい)

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4.Google Public Data Explorerのすごいところは経年変化が簡単に見られるところである。 リンク先のPlayをクリックすると1990年から2008年の経年変化が見ることが出来る。興味があるかたは是非クリックしてみて欲しい。それぞれのデータをクリックすることでそのデータがどの国なのかも容易に分かる。(追記:Google Gadgetを直接取り込む方法を発見したのでエントリーの最後に挿入してみた。)

この変化を見ると上記2008年のトレンドが常に保たれているわけではないことが分かる。 比較的2008年のトレンドに近いのは1994-96年あたりで、1999年になると右下の国々でも低インフレ率x低成長率の国が多くなっている。



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この経年変化の傾向については1997年に発生した通貨危機により、一人当たりGDPが低く、本来であれば高成長が期待できるはず発展途上国の経済に混乱がもたらされ、その状況が2008年にむけて徐々に回復してきたことを意味しているのではないかと個人的には考えている。 

以前に頂いたコメントで指摘されていた通り、人口等の潜在的な傾向は弱いトレンドであり、金融危機等の強い影響に対しては容易にかき消される。よって金融危機等の大きなショックが経済に与える影響の方がはるかに重要という意見はその通りと思われる。 
しかしながら一方で安定した経済状況が一定期間継続した場合、その弱い傾向が表面に出てきて各国はその本来持っている潜在的な能力(潜在成長率?)にふさわしい場所へと回帰していくということをこれらのグラフは示しているように思われ、またその本来の位置との現時点の位置の違いを正確に知ることが日本がこれから何をすべきかを考える意味で重要ではないかと考えている。 (まあ結局は弱い傾向なのでそう思えばそう見える程度かもしれないが、、)


追記:daily gimite (http://d.hatena.ne.jp/Gimite/20080114/1200313343)さんのコンバータを使用したら簡単にガジェットをリンクできることを発見。 感謝!)





追記2: ちょうどWATERMANの外部記憶さんで、日本のデフレの現況を嵐に例えて以下のようにコメントされていた。 
もし上記の解釈に一定の意味があるなら嵐が過ぎ去った後の凪の状態も日本ではデフレだったということになる。 もちろん足元で進行している急激な円高などは明らかに「嵐」の傾向があり、その中での無策は許されないという意見は理解できるが、その原因が過去10年間の日銀の失政であり、嵐でも凪でも「金融政策」一つで思うがままに航海できるというような意見については個人的には納得できない。 金融政策には嵐の時に船が難破するのを(うまくやれば)阻止できる能力はあっても凪の時に無理やり船を進めるほどの能力はないというのが妥当なところではないだろうか?

リフレなら処方は書けるが、潜在成長率を高めるなんて、来年の夏には暑くなるでしょう、みたいな話じゃないか。嵐の中で、嵐が去ればまた平穏がやってくるでしょうとしか言えないならば経済学者は無価値だとケインズは言ったんだ。

http://d.hatena.ne.jp/WATERMAN/20101021/1287687740