「人口減少」責任論についての追記

JCASTニュースを読んでいたら14日の「高橋洋一の民主党ウォッチ」というコラムで先日のエントリー(飯田泰之准教授「人口減少」責任論の誤謬 についての考察 (1))と同じテーマについて論じられていた。

視点としては世界各国の実績データから人口減少とデフレに相関があるかどうかを検証しようというもので、当方のエントリと趣旨は全く同じであるが結論は逆のようである。

「人口減少でデフレになった」 本当かどうかデータから検証する(http://www.j-cast.com/2010/10/14078201.html


というわけで、世界銀行データベースから、各国のインフレ率のデータをとる。そして、人口要因として、人口増減率、生産人口比の増減、従属人口比の増減を考えてみたい。ここで、生産人口とは15歳から64歳までの人口であり、生産人口比は総人口に対する生産人口の比率である。また、従属人口比というのは、生産人口以外の人数を生産人口で割った数字だ。人口減少という総数の話と、生産人口の減少という構造の話は分けて考えるほうがいいので、これらの統計を各国別に調べることとしよう。
あとは、それぞれのデータを世界銀行データベースからダウンロードして、人口増減率、生産人口比の増減、従属人口比の増減のそれぞれを横軸、インフレ率を縦軸として、散布図をかけばいい。
実際の図をみれば一目瞭然であるが、これらの人口要因とインフレ率の間には、ほとんど相関がない。ということは、これらの人口要因はデフレとは統計的には無関係である。


又、JCASTでは図は載っていなかったが、リンクされていた観の目つよくさん(http://tacmasi.blogspot.com/2010/10/blog-post.html)と生活の記録さん(http://d.hatena.ne.jp/saka-san/20101012)のブログに各々作成されたプロットが載っていた。 

生産年齢人口が減るとデフレになる?

要約:
通貨・準通貨増加率と物価上昇率の間には高い相関がある。
一方、人口増加率、15-64歳人口比率の変化は、物価上昇率とは無相関。

http://tacmasi.blogspot.com/2010/10/blog-post.html


人口増加率と物価上昇率のグラフについて上記では発展途上国も含めたすべての国のデータを使用しており、確かに相関は見出せない。ただ、データ元の違い(上記は世界銀行)もあるかもしれないが当ブログでの評価でも一人当たり名目GDP上位グループに限定しなければ相関は見出せない為、ここでの結論の違いはデータの絞込み方(とその背景にある考え方)にあると思われる。 
(又、人口増加率、物価上昇率について対象期間(00-09)の平均データを使用している点も違いを生んでいるかもしれない。 当方のプロットでは、ある年の物価上昇率とその年から10年間の平均人口増加率を使用したが、これは投資が行われる際には少なくともそのくらいの期間で需要を見通して判断するだろうと考えたためである。)


その他で気になったのは「通貨・準通貨増加率と物価上昇率の間には高い相関がある。」という部分である。 確かにプロットを見る限りはっきりした相関があるように見えるが、このことはリフレ政策を後押しする観測なのであろうか?

「通貨・準通貨増加率」とはマネーサプライの増加率を指していると思うが、中央銀行が直接コントロールするのはマネタリーベースのはずである。 そしてグラフの相関を決定づけている高マネーサプライ増加率x高インフレ率の国では通常マネタリーベースは絞っているのではないだろうか?(逆に低インフレ(デフレ)の国では増やしているはず)。

しかるにグラフ上ははっきりと正の相関が現れており、これは高インフレの国ではマネタリーベースを絞ってもマネーサプライは簡単には抑制できない、逆に低インフレ(デフレ)の国ではマネタリーベースを増やしても思うようにマネーサプライが増えないという実態を示しているとは見えないだろうか?