米国経済"回復"の嘘 (Recovery, what recovery?)

Richard Wolffマサチューセッツ大学教授によるguardian.co.ukの記事(7/28)の翻訳。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2011/jul/28/useconomy-economics


"Recovery, what recovery?" Richard Wolff

The plain fact is that corporate profits are the only area of the US economy to recover since 2009. Any other claim is a lie

2009年半ば以降のいわゆる経済の"回復"はそのほとんどが経済の酷い現状を隠すか過小評価する為の誇大広告にすぎない。本来であれば今回の危機にもっとも責任を負うべきである一部の大企業や富裕層は政府が公的資金を使って彼らの"回復"をサポートすることを確信しているが、国民の多くは政府の公的資金による救済の蚊帳の外に置かれている。我々はこのグロテスクな不正義の現実を公的統計に見ることができる。

経済学では、その他の分野と同じように、図やグラフは時に千の言葉よりも価値がある。以下はボストンのノースイースタン大学で経済学者のグループが最近作成したグラフである。彼らの短い報告書は、米国経済の2009年以降の経済の"回復"についての、政治家、メディアのスポークスマン、ビジネスリーダー等の主張の基本的な嘘を暴き出している。

米国において"回復"した、部分的または完全に、ものは企業収益(特に銀行のもの)と株式市場だけであった。レポートのChart 14は、2009年第2四半期から2011年第1四半期までの利益と株価回復のサイズを示す3本のバーを示している。


Chart 14, from The 'Jobless and Wageless' Recovery from the Great Recession of 2007-2009 (pdf). Source: Center for Labor Market Studies, Northeastern University, Boston, Massachusetts; May 2011


そして2011年第1四半期までに回復しなかったもの、それは今も回復していないが、が残りの5つのバーで示されている。 これらの小さなバーは賃金と雇用に関するものである。2009年初頭の危機のどん底から今までの間、米国労働者の賃金と雇用には全く"回復"など存在していない。

2007年に始まった米国の資本家システム(Capitalist System)の危機は何百万人もの人々を深刻な経済の痛みや苦しみに追いやった。しかし2009年初頭に始まった"回復"では一部の人間、すなわち危機に最も責任があったはずの銀行、大企業や株式の多くを所有する富裕層、だけが恩恵を受けた。そしてそのいわゆる経済の"回復"はマジョリティであり雇用と賃金に依存する米国の一般労働者には浸透(トリクルダウン"Trickle-down")してくることは決してなかった。


これまで何度となく"回復"は米国の経済全体に広がる一般的な経済事象であるかのように喧伝されてきたが、それは嘘であったし、今も嘘である。彼らは多くの人々にとっての継続中である経済危機の悲劇的な真実を隠しているのだ。