「消費税増税」の意味

消費税増税が現実味を帯びてきたことで、消費税の是非についての議論が再び活発化しているようである。


どのような税負担が公平か?という問題については価値観の問題と密接に絡んでおり、議論して答が出る話では無い気がするが、その様な価値観の違いがあったとしても、消費税を増税すること自体が本質的には再分配を強化するものである事については議論の余地はあまり無いのではないだろうか? 


それが成立するには以下の二つの単純な条件さえ満たされていればよい

条件1: 金持ち(所得or資産が多い人間)がより多く消費する
条件2: 税金による公共サービスが国民に対して平等に提供される


例えば、消費税を欧米並みの20%にし、その税収増分をベーシックインカムのような形で全国民に均等に分配するケースを考えれば分かりやすい。 国民の平均よりも多く消費している人から平均より少なく消費している人への富の移動が起こることは明白である。 そして消費税率が上がれば上がるほどこの再分配は強化される。

もちろん消費税よりも再分配機能が強い税制は存在するし、恐らく消費税は主要な税金の中では再分配機能が低い方であろう。 但し、その消費税であっても増税には再分配を強化する側面が存在するのは上記の通りである。


ネットで見る限り消費税増税に反対する人々が同時に再分配の強化を主張しているケースが多いように感じる。 しかしながら再分配の強化を志向するなら、むしろ消費税の20−30%台への大幅引き上げを主張すべきである。税率が高ければ高いほど再分配は強化される。

又、これは消費税より所得税を上げろ!と言う主張と矛盾するわけでは無い。所得税が何%であっても、その上に更に消費税もあげれば2重に再分配が進むというだけの話である。


消費税が上がれば、消費が平均より少ない人は増税額分以上の分配を(社会保障等の形で)受け取ることができるにも関わらず、それでもやはり消費税上げは嫌だというのであれば、それは自分は税金を納めたくないが社会保障はしっかり受けたいからなんとかしろと言っているに過ぎないのではないだろうか?



(追記)
条件3として「政府が無駄遣いせずにきちんと税金を国民の役に立つように使ってくれること」というのも必要かもしれないが、政府が受け取った税金に見合う公共サービスを提供しないというのは消費税の是非とは次元の違う話であるし、政府が無駄遣いするから消費税による再分配は嫌だという人が所得税による再分配を支持するのは、他人のお金(税金)だったら政府が無駄遣いしても良いといっているようなものである。


(追記2)
現状は政府の歳出が歳入を大幅に超過している状態である為、上記の考察は一見無意味に見えるかもしれない。しかし、現状の赤字財政が維持できるかどうか(プライマリーバランスを達成すべきかどうか)も本来は別の次元の話である。

これ以上の赤字財政の維持が困難と判断した場合、プライマリーバランスを達成するために、社会保障(or 公共サービス)を削れば政府による再分配機能は小さくなり、増税で賄えば再分配機能は相対的に見ればキープされる。 そして、赤字財政が維持可能な場合も、その赤字財政に加えて増税による社会保障の拡充が行われれば更に再分配は強化される。

但し、増税による再分配の強化が経済に与える影響については慎重に考える必要がある。再分配が強化されても経済がそれ以上に後退すれば貧困層はますます生活が苦しくなる可能性が高い。