本当に今が「過度な」円高だと思うなら海外資産に投資すればどうか?
日本では円高になるたびに政府に円高対策を求める声が上がるが、こういった議論を聞いていていつも思うのは、もし今が「過度に」円高だという事に自信があるのであれば、そういう人は外貨建て資産をどんどん買うべきではないだろうか?ということである。
そうすれば、もし「過度の」円高が単純に円安によって修正されるなら2重の利益が得られる。
仮になんらかの理由(金融政策??)によって過度の円高が続くのであれば、国内資産の収益性は海外資産の収益性(共に実質での)下回り続けるはずだからやはり海外資産を購入した方が得になるはずである。
ちなみに、もし円高の勢いが強すぎて為替の変動を考慮したら海外資産の方が(実質での)収益性が低くなるというなら、それは過度の円高とはいえないのではないか? その予測が妥当性を持つなら相対的にはより海外から国内資産に資本が流れ込むはずだから、自然とより円高になるはずである。
現在のように他国のリスクプレミアムの高騰によって円高になっている場合も事情は変わらない。 他国のリスクプレミアムが高く見積もられすぎている(だから過度な円高になっている)というなら、その通貨建ての資産に投資すれば円建て資産に投資するよりも高い収益性が得られるだろう。 唯、それはリスクを取ったから高い収益性が得られているだけとも言える。
いずれにしろ「過度の」円高が本当に実質で「過度」であれば、政府の介入など無くても修正されるし、そのときには「過度」の円高の時に外国資本に投資していた人間は大きな収益を上げることができるわけである。(だからこそ政府の介入など無くても長期的には修正される、とも言える)
尚、筆者は今が過度な円高でないと言っているわけでは無いし、相場は常に正しいといっているわけでもない。(特に最近の相場は投機的な要素がつよく出すぎているとも思っている。)ただ、相場が間違っているという確信が本当にあるなら、それで儲けることも可能だろうと言うだけの話である。
「過度の」円高だと確信している人がその確信に基づいて外貨建て資産を買えば買うほど早期に収束していくはずであるし、過度の円高による国内産業へのダメージも抑えられる。更にその過程においては外貨建て資産を購入した人は大きな利益を得られることになる。本当に今が過度の円高だと確信するなら政府の介入を求める前に急いでやることがあるのではないだろうか?
(注)文中の円高・円安は基本的に実質。
[参考] 以下は上記各ケースの単純化した例示。
(A) 実質為替レートが均衡的な値の場合。
米国資産の名目リターンが8%、日本が5%、米国のインフレ率が3%で、日本が0%とする。
1ドル100円の時に1億円を米国資産に投資すれば5年間で147万ドルになる。
一方でインフレ率の差を考えると5年後の名目為替は87円(=インフレを考慮した実質為替は変化なし)。
よって円建てにもどせば1.27億円となる。これは日本資産に投資した場合と同じである。
(B) 実質為替レートが過度に円高(+10%)で、長期的に為替を通じて補正される場合。
米国資産の名目リターンが8%、日本が5%、米国のインフレ率が3%で、日本が0%とする。
1ドル100円の時に1億円を米国資産に投資すれば5年間で147万ドルになる。
一方でインフレ率の差のみを考えると5年後の名目為替は87円。
10%高すぎた実質為替が修正されたとすれば96円。
よって円建てにもどせば1.38億円となり、日本資産に投資した場合(1.27億円)よりプラス。
(C) 実質為替レートが過度に円高(+10%)で、かつ補正されない場合。
米国資産の名目リターンが8%、日本が2%、米国のインフレ率が3%で、日本が-1%とする
(実質為替での過度の円高が維持されることにより、日本はデフレになり名目・実質リターン共に米国に劣ると仮定)
1ドル100円の時に1億円を米国資産に投資すれば5年間で147万ドルになる。
一方でインフレ率の差のみを考えると5年後の名目為替は82円(=インフレを考慮した実質為替は変化なし)。
よって円建てにもどせば1.21億円となる。 一方で高すぎる為替による経済への悪影響により日本の名目リターンは2%となっているので日本資産に投資すると1.16億円にしかならない。