少子化の加速を少しでも食い止めるにはどうすればよいか?

少子化について二つのエントリー(「なぜ少子化は悪なのか?」「マスオさんにみる少子化の要因と少子化対策の重要性について」)を書いたので、ついでに少子化対策についても筆者の考えを書き留めておきたい。


で、いきなりぶっちゃけて言ってしまえば少子化対策の鍵は「金」である。 もちろん金で解決できない少子化の要因はいくらでもあるだろうが金で解決できることも多い。 逆に言えば(広義の)金で解決できないことに効果的な対策を打つのは至難であり、まずは金で解決できるところから取り組むべきだという事である。


まず当たり前の話であるが、子供を作るには相手が必要なわけで、日本の場合、その多くは結婚相手ということになる。

ここで年齢別既婚率のグラフ(下図/出典DODA)をみると20代から30代前半、後半の全ての年代で所得が高い方が既婚率が高いという一般的な傾向がみられるが、この傾向はどの年代でも700万円くらいの所で頭打ちになっている。 



http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1211/19/news057.html


又、年代別の差を見れば、低所得層では年齢が高まるにつれて既婚率が大きく上昇していくが高所得層ではその傾向は弱まる。 なんだかんだ言って多くの人が年功序列的に所得が上がっていくことを考えると、このトレンドは更に急激なものになっていると考えられる。例えば20代で年収350万円、30代前半で450万円、30代後半で550万円というモデルで考えると、それぞれの年代での既婚率は17% → 51% → 68% と大きく上昇していることになる。

一方で若いころから高所得者層だった人間が更に所得を増やしてもそれほどの影響はないということも言えそうだ。 ちなみにこのデータは筆者の個人的な観察とも合致する。 筆者の知る限り高所得の勝ち組企業に勤めている人(男性)は大学時代から付き合っている相手や社会人数年目から付き合っている相手と早々とゴールするケースが非常に多いように感じる。


この観察から若干乱暴に考察を引き出すなら、全員が高所得者になれば良いということになるが、そんなことは全員が子沢山になればよいというのと同様、現実的ではない。 現実的な、そしてやる気にさえなれば政府に可能な施策としては高所得者層から低中所得者層、特に若年層の低中所得者層、への再分配の強化が考えられるだろう。 これが上手くいけば低所得者層の婚期を前倒しすることができるだろうし、逆に高所得者層は若干負担が増えてもその婚期に大きな影響はないように見えるので、全体の既婚率の底上げにつながるはずである。 


では今の若年・低所得の層の既婚率を上昇させれば子供は増えるだろうか?

もちろん既婚率あくまで既婚率であって、直接子供の数を見ている訳ではない。 所得が上がれば上がるほど加速度的に子沢山になるのであれば上記の対策がかえって少子化を加速させる可能性もありうる。

しかしながら、所得別の子供の数を集計したデータ(下図)を見ると、世帯あたりの子供の数も所得が高いほど多くなる傾向がある一方で、やはり700から800万円くらいを境として所得に対する反応が鈍くなっており、日本の場合、所得の再分配強化は既婚率の底上げと、世帯あたりの子供の数の底上げの両面から効果がありそうである。


http://getnews.jp/archives/227531


又、もう一点付け加えるなら再分配強化の一環としてシングルマザーの支援を強化する事も効果があるだろう。 現時点で支援が少なくて苦しんでいるシングルマザーを助けることも重要であるが、シングルマザーでも十分に子供を育てていくことができるというコンセンサスが生まれれば、現在残念ながら中絶されている多くの子供達の何%かは生まれてくることができるかもしれない。 もちろんそうして生まれてくる子供が将来に十分期待を持てるだけの環境、特に教育環境、も整備されていなければいけないだろう。 そうでなければシングルマザーになるということと子供が苦労することが同義になってしまいかねない。


もちろんこれらの施策を実際に行うとなれば大きな抵抗が予想される。 再分配の強化は一時的には経済に悪影響を及ぼす可能性もあるし、そのような事をすれば能力のある人間はみな海外へと流出してしまうというような主張(脅し?)も高まるだろう。 しかしながら少子化問題は日本における最大の長期的な課題であり、しかも少子化はそれ自体がスパイラル化していく可能性があり、つまりは短期的・緊急的にに対処しなければならない課題である。 

ちなみに筆者は当初から民主党を全く支持していなかったが、子ども手当自体はそれほど悪い案ではないと思っていた。ただ問題は自民党が反対していたことからその継続性が疑われたことにある。 少子化対策には長期にわたるコミットメントが重要であり、継続性が疑われてはその効果が半減する。今の政局を考えると難しい事ではあるだろうが主要政党が一致しての抜本的な少子化対策の策定が待ち望まれるところである。