長期金利を「長期的観点」だけから判断しても駄目な件について

最近、為替、株価、長期金利共に神経質な展開が続いているが、前にも書いたとおり「異次元」な金融緩和で、「壮大な実験」をやってるのだから、以前のような安定した相場が期待できなくなるのは当たり前であり、今さら目先の変動で騒いで見ても始まらないだろう。 既に賽は思いっきり遠くまでぶん投げられたのであり、今さら拾いにいくような真似もできない。 

ただ、それはそれとして日本がどのようなリスクにさらされているのかについては認識しておく必要がある。 筆者の理解では最大のリスクは財政問題であり、つまり当面は長期金利の動向が非常に重要となる。 


長期金利に関しては足元の動きだけを見れば神経質な展開が続いているとはいえ、まだまだ水準としては1%以下で収まっており、直ちに大きな問題に直結する水準ではないが、かといって楽観視できる訳ではない。 例えば片岡剛士氏がtwitterで

どなたかが「短期の動きに惑わされる事なく、長期的観点から判断した方が良いのではないか」とおっしゃっていた事を思い出したけど、長期金利の推移。ご参考まで。 pic.twitter.com/5c90Xnc8hJ

と指摘され、多くの賛同者が出ているようだが、筆者にはややミスリーディングに感じられる。

たとえば長期は長期でもこちらのグラフなどはどうだろう?


http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/005.htm


1990年代以降、国債残高が増加しつづけている一方で利払い費の増加が抑えられているのは、金利が低かったことに加え、昔の償還期を迎えた高金利の国債を低金利で借り換えることによる底上げ効果があったためであり、既にその効果は切れており金利が一定のままでも今後利払い費が増加すると予想されている。 その上で、これから金利が本格的に上昇トレンドに入るとなると、「残高の増加+金利の上昇+償還期を迎えた低金利の国債の高金利での借り換え」で利払い費が急増することが懸念されるわけである。


よって長期金利が水準としてはまだまだ過去最低水準であるという指摘は正しい。 但し、その事実は「過去にもっと高い金利でも大丈夫だったんだから、これから少しくらい上がってもまだまだ大丈夫」という事を示している訳ではないことには十分に留意する必要があるだろう。