2012-01-01から1年間の記事一覧
同じテーマのエントリーが続いてしまったが最後に以下のコメントについても考察を加えておこう。 (赤線は筆者) 住宅価格が下がるなかで家賃が安定的なのは、それまでの家賃が「安すぎる」状態から適正な状態に戻っていってるだけ、という認識は、賃貸市場…
前回のエントリーに関し、id:Lhankor_Mhy様から非常に興味深い論文を紹介していただいたのでそのデータを下に住宅価格と家賃についてもう少し考察してみたい。 「家賃の名目硬直性」 清水千弘/渡辺 努 http://www.ier.hit-u.ac.jp/ifd/doc/IFD_WP66.pdf この…
常に高いクオリティで洞察力に富むエントリーを量産されており、いつも興味深く読ませていただいている「ニュースの社会科学的な裏側- www.anlyznews.com」様の「家賃にみる下方硬直性」というエントリーがはてぶで話題を集めていた。 「家賃にみる下方硬直…
世界中で何度も繰り返し住宅バブルが発生・崩壊していることからも分かるとおり、住宅はその特性として「投機」の対象になりやすい条件を備えている。それは前回書いたとおり「ある程度希少性があり、価格の上昇によって供給量が容易に増加せず、代替もきき…
前回のエントリーでは「バブル」について書いたが、「バブル」と密接な関係にあるのが「投機」である。 よって今回は「投資」と「投機」の違いについて筆者の考えを書いてみる。最初にお断りしておくが、以下に述べる「投資」は一般に考えられているより範囲…
バブルの崩壊が実体経済に深い爪あとを残すことを否定する人はさすがに殆どいないだろうが、一方で崩壊しさえしなければバブルは悪いものではない、という見方もあるようである。(或いは「崩壊するまではバブルではない(キリ」とか、、)しかし、筆者は崩…
ブログエントリーにいただくコメントにはなるほどと思わせるものも多くあるが、それは違うのではないか?というものもある。 まあそういったものを気にしていても始まらないわけだが、少し面白いものがあったので考察してみたい。 piccad 所得収支の元は貿易…
米国の3月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数(季節調整済み)が前月比12万人増と予想の20万人増を大幅に下回った一方で、失業率は8.2%と前月の8.3%を下回った。最近の米国の失業率の改善(といってもまだ8%以上あるわけだが)の要因として、労働参加率の低…
近年の石油を初めとする資源価格の高騰は世界経済に大きな影を落としている。 その一つの背景として中国を初めとする新興国による趨勢的な需要増があり、中国を初めとする新興国の国営石油会社による資源権益獲得が盛んに行われてきたが、金融危機後は日本の…
3月24日に行なった白川総裁の講演の邦訳が日銀のサイトに上がっている。 参照:「セントラル・バンキング ―危機前、危機の渦中、危機後―」 http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120326a.htm/ 内容的にはそれほど新しい部分こそないものの…
現在、日本の失業率は他の先進国と比較すれば十分に低い水準にあり、さらに低下しつつある。 これはデータを見れば明らかな「事実」である。 この日本の雇用の現状は、失業率が高い水準にありしかも上昇傾向にある英国等とは比べるまでもなく、また下落傾向…
前回のエントリーでは原油価格が物価指標としてのインフレ率に与える影響について書いたが、これはいわゆる「輸入インフレ(圧力)」の話である。 「輸入インフレ(圧力)」があれば「輸入デフレ(圧力)」も当然存在する。 (輸入インフレ圧力は認めても輸入…
もし日本のインフレ率をどうしても底上げしたいのなら簡単な方法がある。 それはガソリンに掛かる税金を減税する(注1)か、或いは従量課税から従価課税にすることである。 現在、日本ではガソリン税は従量課税となっており、その課税額は暫定税率分も含め1…
イギリスはインフレターゲット採用国の中でも、その目標が達成されない場合に中銀が説明責任を負うという、より厳格な仕組みを採用していることで知られている。 インフレ率が目標値から乖離した場合の明示的な罰則規定はないが、上下1%を超えて乖離した場合…
かなり間があいてしまったが、いくつかコメントも頂いたので前回のエントリーに関して少々補足をしておきたい。 フリードマンと言えば最近では「インフレはいつ、いかなる場合でも貨幣現象である」という言葉ばかりが繰り返し引用されている印象がある。 こ…
インフレの害を説明するにはアルコールに例えるのが分かりやすい。アル中が酒を飲み始めたとき、まずやってくるのは程よい酩酊感である。 悪い効果は次の日の朝になってはじめて現れる。 二日酔いで吐き気と共に目覚めたアル中はしばしばその苦しみを和らげ…
「日銀版インフレ目標政策を勝手に予想してみる」というエントリーを書いていたのだが、書き上げる前に日銀が事実上のインフレ目標?として「中長期の物価安定の目途」を発表した。 ちなみに書きかけていたエントリーの趣旨は 日銀の金融政策は「実質的なイ…
過去何度かのエントリーで日銀の金融政策の背景となっている理論を説明するいくつかの論文、書籍を紹介したが、近年の先進国中央銀行による金融政策の潮流という観点から日銀の金融政策の立ち位置をより分かりやすく解説したのが日本銀行金融研究所長などを…
もう一つ補足。日銀の理論をあくまで異端なものにしておきたがる人間が多いようだが、日銀の理論は大枠でみればBISヴューの影響を強く受けたものと考えられる。 (BIS : Bank for International Settlements、国際決済銀行。 1930年に設立された中央銀行をメ…
それほど本質的な話ではないが、少し気になっていたのでメモ。 先日FRBがインフレ目標の導入を表明した際に、その目安を"measured by the personal consumption expenditures (PCE) price index"と説明していたが、なぜかこれに関して日本では食品とエネルギ…
アメリカが事実上のインフレ目標導入に踏み切ってから、日本でもやるべきだという声が高まりつつある。 筆者は議論自体は別に否定するものではないが、気になるのは当事者である日銀サイドの説明を踏まえていない批判が多いように感じるところである。 例え…
前のエントリーにはてぶで長いコメントを戴いたのだが、いろんな意味で興味深かったので、すこし取り上げてみる。 バブル崩壊/金融不安は経済学会でもまだ(実用的なレベルで)完成された理論・モデルはなく、故に金融緩和が金融システムを不安定化させる、…
前回のエントリーで端折った部分にはてぶでつっこみがついていたので少しだけ補足。 charleyMan様家電とかPCとか自動車とか、どんどん値下げされる状況だと、もう少し待って買おうって思いませんかね?逆にどんどん値上げされる状況なら、早く買っておこうと…
インタゲやリフレ政策を支持する人々の主張の一つに「(マイルド)インフレは人々の消費を活性化させる」というのがあるが、これは筆者から見ればリフレ派の主張の中でも最も理解しがたいものの一つである。 その背景となる主なロジックの一つは以下のような…
クルーグマンが”Jobs, Jobs and cars”というコラムで、雇用創出者(job creator)としてのスティーブジョブズという見方に異議を唱えている。"Jobs, Jobs and Cars" by Paul Krugman日本語訳: 「クルーグマン「雇用,ジョブズ,自動車」(NYT,2012年1月26…
前回のエントリーではFRBによるインフレターゲット採用の「出口戦略」としての側面を取り上げた。 といっても昨年秋頃に報道されていたFRBによるインフレターゲット採用の可能性と、それに対する数名の理事の意見をまとめた記事(参照「FRBにインフレターゲ…
忙しくて余り更新ができていないのだが、FRBがインフレ目標政策を(実質的に)採用したとのニュースが注目を集めているので、少しだけ考察してみる。 ネットではこのニュースに対してリフレ派の人々からは当然のように好意的な評価が相次いでいるようである…
日本の財政の厳しさについては当ブログでも過去幾度か取り上げたことがある。 特にデフレを脱してマイルドインフレにさえもっていけば自然と財政問題が解決されるというような議論については、幾つかの試算を示し、国債金利の動向次第では、低インフレ下の現…