財政再建はなぜ必要で、いつすべきなのか?

そもそも財政再建がなぜ必要かといえば、財政が不健全でそのままではいずれ大きな問題を引き起こす可能性が否定できないからであり、多くの場合その主な原因は過去に財政赤字を顧みずに行った財政出動(財政拡張)ということになる。 そしてなぜ過去に財政赤…

黒田日銀総裁の消費税増税支持について

最近の黒田日銀総裁による消費税についての発言は主に消費税先送りを支持する人々から色々と批判を受けているようである。 その発言の内容をざっくりまとめると 増税した場合のリスクと先送りした場合のリスクを考えると、増税して予想した以上に景気が落ち…

緊縮・財政再建・経済成長

緊縮による財政再建について肯定的に書くと、書いてもいないことに対する批判が集まることが多いので、今回は筆者が重要と思っている点を幾つか整理して書いておきたい。 1. 殆どのケースでは緊縮は景気に対して抑圧的である。 緊縮を肯定的に書くと、「多く…

緊縮の痛みと成果について

先日アップした「なぜイギリスは日本型の長期停滞に陥らなかったのか?」に関して午前様から以下のクルーグマンのエントリーを紹介いただいた。 緊縮の痛み,ケインジアン政策の処方 by ポール・クルーグマン http://urx.nu/bEj9 (景気過熱期以外の)財政再…

英国は再び住宅バブルに突入したのか?

弊ブログでは金融緩和のリスクの一つとしてバブルを誘発する危険性について何度か考察したことがあるが、現在のイギリスの状況(特にロンドンを中心とする都市部の状況)はまさにその懸念を裏付けるものとなってしまっているように見える。筆者が居住するロ…

なぜイギリスは日本型の長期停滞に陥らなかったのか?

イギリスは今回の世界金融危機の震源地の一つとして、リーマンショック以降、長らく景気低迷に陥ってきた。 イギリスのたどった経緯をざっくり説明すると、バブル崩壊⇒金融危機⇒金融機関への公的資金注入&量的緩和、という既視感のある過程をたどり、低成長…

「定常不況」の正体

筆者が何度か考察してきた「定常不況」はある意味、自己矛盾的な状況といえる。 つまり一般的な理論によれば定常状態=長期均衡では安定的に需給が一致しているはずで、すなわち定常であれば不況ではありえないという事である。 そしてこの論法に従えば、定…

人口動態、長期金利、定常不況 (補足)

前回のエントリーにまたコメントをもらったので、すこし補足しておく。 一般に長期金利は 長期金利 = 期待潜在成長率 + 期待インフレ率 + リスクプレミアムであらわされる水準に落ち着くとされる。 そして長期では通常「期待潜在成長率 ≒ 均衡実質金利」…

人口動態、長期金利、定常不況

前回のエントリーと順序が逆になってしまったが、今回は人口動態、特に「人口増加の鈍化」が定常不況(或いは長期停滞)を引き起こす過程について少し考察しておきたい。 まず人口増加の鈍化が経済に与える影響については、前回に続きクルーグマンのエントリ…

クルーグマンのかんたんな「長期停滞」克服法は機能するのか? 

ポール・クルーグマンの「なんで経済学者は人口成長を気にかけるの?」という記事が注目を集めていたが、その中で出てくる「長期停滞」のかんたんな克服法がかなり違和感のあるものだったので、「なぜ人口動態が経済に与える影響が特別なのか?」という点に…

人口減少とデフレの関係に関するコメントに答えてみる

本ブログのエントリーの中でも人口減少がらみは受けが良く(悪く?)、決まって色々と批判を頂くことになるわけだが、どうもテンプレ的というか、エントリーの中身と関係なく、一見分かりやすい切り口から一切合財まとめて全否定するものが多い。 その批判の…

人口減少がデフレギャップと人手不足を引き起こす?

今回は4年ほど前のエントリーの焼き直し+α になるが、人口減少がその各段階においてデフレギャップ(需給ギャップ)と人手不足という一見相反する二つを引き起こす可能性について考察してみたい。 人口減少についての議論には減少か増加かの二つの状態しか存…

アベノミクスと「真の失業率」について(補足)

前回のエントリーに対して、再度以下のような批判コメントを頂いたので、返信を兼ねてもう一回だけ延長戦。 自前で季節調整をすれば真の失業率は 2012年4月 6.3% 2012年5月 6.3% 2012年6月 6.4% 2012年7月 6.1% 2012年8月 6.4% 2012年9月 5.9% 2012年10月 5.…

アベノミクスと「真の失業率」について

前回のエントリーに対して、コメント、ブクマ等で複数の方から「ラスカルの備忘録」様の「真の失業率」エントリーをご紹介いただいた。この「真の失業率」の詳細については「ラスカルの備忘録」様のこちらのエントリーで詳しく説明されているが、年齢階級別…

人口動態と日本の失業率の推移について

前回のエントリーの中で日本の雇用が異次元緩和を行なう前から回復トレンドに乗っていたと書いたところ、以下のような指摘を頂いたので、すこし考察してみる。 アベノミクス前から景気回復が起きていたというのが事実誤認。 過去5年の年末時点と今年に入っ…

景気が良くなったのはアベノミクスやデフレ脱却のおかげなのか?

以前にも書いたように筆者は英国在住の為、日本の景気回復を肌で感じることはできないが、色々な記事や弊ブログへの書き込み等を見るに、どうやら日本でも昨年あたりからようやく景気回復が実感できるようになったようである。そして予想されたことではある…

リフレ政策の途中経過について簡単に考察してみる

ネタ収集の中心だったGoogle Readerのサービス停止を契機にすっかりご無沙汰になってしまっていたが、黒田日銀のリフレ的な政策の開始から約1年が過ぎ、現状をどう思っているのか?的なコメントをいくつかいただいたので、久しぶりに少し書いてみる。 こうい…

誤解を招きそうな部分に一部追記実施。

インフレと金利が上昇すると日本の財政はどうなるのか?

インフレと金利と財政の維持可能性に関する考察は色々な立場の人が主張する「お話」だけを追いかけていてはイメージがつかめない部分があるので、かなり乱暴な部分はあるが頭の体操的に試算を一つ二つ示してみたい。 まず、ある年における日本の財政に関する…

長期金利の上昇はいかにしてアベノミクスを失速させるのか、

前回のエントリーで紹介したリチャード・クー氏の論説と被るが、現在注目を集めている長期金利の上昇がこれからどんどん進んでいった場合、どのような悪影響をアベノミクスに与えうるかについて少し考察しておく。 まず最初にはっきりさせておきたいのは、現…

異次元緩和でもたらされた金利上昇は悪い金利上昇?

異次元緩和後の長期金利の上昇に関しては世界でも断トツの国債残高を積み上げている日本の財政の維持可能性という観点から注目を集めることとなり、様々な主張が繰り広げられることとなった。その中でもクルーグマンはじめとする海外の著名経済学者達による…

財政再建の正当性について

なにやら財政再建があたかも悪い事であるかのように主張するのが一部で流行っているようであるが、財政再建の正当性について一度書いておきたい。 既に原則を説いても仕方がないくらいの所まで来てしまっているが、財政について法律(財政法)では「国の歳出…

長期金利に簡単に上昇してもらっては困る理由

黒田日銀の異次元緩和で目標として挙げられた波及ルートの内、「長期金利の引き下げ」についてはあまり上手くいっていない事は既に多くの人にとっては明らかだろう。 この問題については、黒田総裁が異次元緩和後の会見(参照)で記者 「1 点目は、本日、一…

遠くて近い?日本財政破綻への道

長期金利に関する懸念ついて書いたついでに、日本の財政問題自体についても少し書いておきたい。 とはいってもこのテーマについては2年程前に幾つかエントリーを書いており、考察のベースになる部分については現在も変わっていないので、まずは前回のエント…

長期金利を「長期的観点」だけから判断しても駄目な件について

最近、為替、株価、長期金利共に神経質な展開が続いているが、前にも書いたとおり「異次元」な金融緩和で、「壮大な実験」をやってるのだから、以前のような安定した相場が期待できなくなるのは当たり前であり、今さら目先の変動で騒いで見ても始まらないだ…

資本主義とトリクルダウン理論について

資本主義では金持ちが益々金持ちになっていくというのは今では多くの人が実感・同意するところだと思うが、「経済学の父」と呼ばれているアダム・スミスも既にそうなる可能性については気づいていたように思われる。しかしながらアダム・スミスはそれでもや…

リフレ政策とトリクルダウン理論について

「トリクルダウン理論」はそれなりに名前を知られている理論ではあるが、意外と内容は知られていないもののようでもある。 その簡単な説明をwikipediaから引用すると トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、trickle-down theory)とは、「富める者が富…

長期金利上昇で明らかになってきた異次元緩和のの「トリクルダウン」頼みの波及ルートについて

ここ数日、長期金利が急上昇したことで財政破綻だなんだと焚き付けている人がいるようだが、依然1%を切る水準である事には変わりなく、財政破綻を語るにはやや気が早いように思われる。リスクが高まっているとは言えるかもしれないが、「異次元」な政策を打…

国家にとってのグローバル企業とは何か?

内田樹氏の「壊れゆく日本という国」という朝日新聞への寄稿で展開されている「グローバル企業」論は納得できる部分も多い反面、ややグローバル企業を一面的に捉えすぎているのではないかと感じたので、少し筆者も考察してみたい。 まず筆者は、グローバル企…

日本のデフレ「不況」とは何だったのか?

先日のエントリー(「なぜ日本だけがデフレになったかを少し考察してみる」)では何故日本だけがデフレになったかについて考察してみたが、今回は日本のデフレ「不況」とはなんだったのかについて考察してみたい。 この二つを分けてエントリーにしていること…