アベノミクスと「真の失業率」について(補足)

前回のエントリーに対して、再度以下のような批判コメントを頂いたので、返信を兼ねてもう一回だけ延長戦。

自前で季節調整をすれば真の失業率は
2012年4月 6.3%
2012年5月 6.3%
2012年6月 6.4%
2012年7月 6.1%
2012年8月 6.4%
2012年9月 5.9%
2012年10月 5.6%
2012年11月 5.7%
2012年12月 6.0%
2013年1月 5.4%
2013年2月 5.1%
2013年3月 5.2%
となり、ここから上で述べられているようなことが誤りであり、2012年4月からの景気後退期入りにともなって2012年は年末にかけて雇用が悪化しており、2013年の真の失業率の低下は2012年の夏から秋にかけての流れの延長ではなく、景気後退期入りによる悪化の流れを反転させた非常に強力なものによるということが分かる。


残念ながら季節調整の手法の詳細は不明であるが、とりあえずこの季節調整後の真の失業率をプロットすると以下のようになる。


率直に言ってこのグラフからなぜ「2012年4月からの景気後退期入りにともなって2012年は年末にかけて雇用が悪化しており、2013年の真の失業率の低下は2012年の夏から秋にかけての流れの延長ではなく、景気後退期入りによる悪化の流れを反転させた非常に強力なものによるということが分かる」とまで言い切れるのか疑問であるが、更にトレンドをはっきりさせる為に「3x3期移動平均」を掛けたのが以下のグラフになる。

尚、「3x3期移動平均」についてはdbastyle様の「移動平均法による季節調整 with Excel」の「2.トレンド循環値の計算(季節調整済み実測値から無作為性をとりのぞく)」を参照。 又データが不足する期間の前後は12ヶ月後方移動平均の値から逆算して推定した値を使用している。


筆者としてはこのグラフは真の失業率の低下トレンドが2012年の年央頃に始まっている事をかなりはっきりと示していると思うのだがいかがだろうか?


「2012年末から2013年に掛けてはアベノミクスという大きな出来事があったのだからそれをまたいで移動平均を取るべきでない」的な反論はありうるかと思うが、たとえそれが結果的に事実であったとしても「何かがあったはずのタイミング」をトレンド分析を行なう際に最初から特別扱いするのはデータに「見たいものを見てしまう」リスクを増大させる事になる。 前回の考察と今回のデータが示しているのは、単純にトレンドを見ただけではその「何かがあったはずのタイミング」でトレンドに大きな変化があったという事実は(少なくともそれほどはっきりは)認められない、という事になるだろう。