為替介入で投機筋に勝つカンタンな方法

今回は趣向を変えて、筆者が考える「為替介入で投機筋に勝つカンタンな方法」について書いてみたい。


日本の円が安全資産として買い進められているのは、リスクが相対的に低いと考えられているからである。 つまりリスクが上昇すれば円は売られる。 


ゾブリンリスクが世界的な問題となっている中、膨大な国債残高を抱える日本のリスクが低いというのは奇妙な気もするが、国債が国内で消化されていることや、税負担率が低く増税余地が大きい事等が評価されているのだろう。


もう一つの為替に関連する主要なリスクとしてはインフレリスクが挙げられると思うが、このリスクは高めるだけでいいなら非常に簡単である。 日銀が狂ったように円を刷りまくって配りまくれば直ぐにインフレになるだろうし、更に言えばこの場合直接的に評価されているのは「貨幣量」ではなく「リスク」であるから、日銀総裁を森卓あたりにすげ替えれば日銀が円を刷るまでもなく即日円は暴落するだろう。そうなれば輸入品の値段もがんがん上がり、デフレも即日解消である。


ただ、このような形でのリスクの上昇は例えそれが円安とデフレ脱却をセットでもたらしたとしても殆どの国民にとっては全くメリットが無い。 作り出すべきリスクはもっと都合の良いリスク、つまり為替市場を揺さぶっている投機筋にとっては大きなリスクだが日本国民の生活にとっては小さなリスク、でなければならない。 しかしその様な都合の良いリスクを政府が作り出すことは可能だろうか?


筆者はその答えは「スイス方式(?)」にあるのではないかと考えている。


実は筆者はスイスが1ユーロ=1.2スイスフランを上限として無制限の為替介入をすると公表したとき、投機筋にやられるだけではないかと考えていたのだが、今の所うまくいっているように見える (問題もあるようだが、)。

スイス中銀がフラン高圧力に耐え切れなくなれば防衛ラインの1ユーロ=1.2スイスフランが破られてスイスフランを買いを進めた投機筋がぼろもうけできる一方で、もし1ユーロ=1.2スイスフランが守りきられても投機筋はたいして損をする訳ではない為、1ユーロ=1.2スイスフランを挟んだ攻防が展開されるかと思っていたが、実際には1.23あたりで揉みあっている。


そして、筆者はその理由の一つはスイスが上限(シーリング)を1ユーロ=1.2スイスフランからさらに1.25スイスフランまで切り下げるという噂が広がったことではないかと考えている。

Swiss Central Bank May Lift Currency Ceiling, Adviser Tells Tages-Anzeiger


Ernst Baltensperger, an adviser to the Swiss central bank, said that he considers it possible that policy makers will soon increase the franc ceiling versus the euro to 1.25, Tages-Anzeiger reported, citing an interview.
“I don’t know any expert who doesn’t consider the franc still overvalued at 1.20 based on fundamental factors,” Baltensperger told the newspaper in the interview published today. “As long as one defines the lower limit at 1.20, the risk for the central bank is comparatively limited but all fundamental data are pointing toward a range of between 1.30 and 1.40.”
He also said that while the currency ceiling poses “a high risk,” it would have been “more risky not to do anything.” The Swiss National Bank is able to defend its cap “for as long as it wants,” he said.

http://www.bloomberg.com/news/2011-09-21/snb-may-raise-currency-ceiling-adviser-tells-tages-anzeiger.html


もしこの噂が現実になるなら、上で考えた投機筋との攻防の様相はかなり変わってくる。 もし1.20近辺で買い進んだ後に、ある日どかんと1.25や1.30まで介入されたら痛手は大きい。 しかもそれが実現されるかどうかはスイス中銀次第である。そしてこれをやってもスイス中銀の資産が直ぐに毀損することはない(むしろスイスフラン建てでは為替差益がでる?)

実際にこの噂が流れ始めた頃からスイスフランは1.2と1.25の丁度中間あたりをふらふらするようになった。 


長期的な為替相場の動きを介入によって誘導することは難しいし、又やるべきでないと筆者は考えているが、短期的な為替相場であれば単独介入によっても十分に影響を与えることができる。 そして、一般的に投機筋が目的としているのは短期的な利益である。

つまり為替相場の短期的な不確実性(変動)を政府が高めてやれば投機筋にとっては短期的な売買に対するリスクの増大に繋がるため、ファンダメンタルズから乖離した投機的な売買は抑制されるのでは無いか、という発想である。 今回の場合なら一旦は78円に指値介入するとして、遠くない将来にこの指値を85円にする可能性があることを今の口が軽い財務大臣あたりに「つい、うっかり」みたいな感じでリークさせればよい。 うまくいけばこれで一方向への売買はなくなるだろう。 


又、なんならこっそり78円で様々な外貨建て債権を大量に買い進めた上で一気に85円あたりまで誘導して更に「次の指値目標は95円かもね、」とやれば巨額の為替差益が得られるはずだから、それを復興財源に当てれば、円安になるし増税無しで財源もでてくるしで一石二鳥であろう。


「自由な為替相場制度」の理念とは全く相容れない話ではあるが、「コンピューターで制御された投機筋」による為替取引を牽制するのが目的であれば、こういった「たちの悪い話」は意外と効果があるのではないかと思うがどうだろうか? 



(念の為に書いておくと、タイトルに「カンタンな」といれてあるように、本エントリーは「間違った答」であり、ネタ・エントリーなので、そのつもりでお読みいただければと、、、 )