「年功下落の時代」が来る??

超有名ブログである「Chikirinの日記」で「年功下落の時代へ!」というエントリーが話題となっている。 簡単に言うと人口動態を考えると今後社会に出ていく若者達は給与右肩下がりの「年功下落」時代を過ごすことになるというお話である。


インパクトのあるまとめであり、面白さという点ではさすがという他ないが、いくらなんでも単純化しすぎであろう。


エントリーでは「主に20歳から39歳くらいの消費者に売れている商品やサービスを販売、提供している会社に勤めている場合、」と前提を置かれて、今後該当する消費者がどんどん減るので売り上げがどんどん減っていき給与も上がらなくなるとされているが、人口動態が原因でなくも需要が右肩下がりになっている業界はたくさんある。


例えばオートバイ市場なんかは過去数十年間ずっと右肩下がりを続けているようだが別にオートバイ会社の社員の給与が年功下落になったと言うような事実はない。 ただ、需要に併せて供給が減っただけである。 そもそもオートバイ会社だけが「年功下落」になったら誰もそんな会社に入社しなくなるだろう。


つまり日本全体が「年功下落」にならなければ特定の産業の需要が趨勢的に下落したとしても、「年功下落」時代は来ないわけである。


では日本全体が「年功下落」の時代を迎えることはあるだろうか?


確かに不況で日本の一人当たり名目GDPが一時的に下がることはあるかもしれないし、失業率も他の先進国並みに上がっていく恐れも強い。


ただ、労働人口が減るということは総需要に対する労働者一人当たりの取り分が増えると言うことでもあり、必ずしも需給ギャップでみてマイナスとなるわけでは無い。


では何故過去20年ほどについては人口動態が需給ギャップを拡大させる原因になっていたかと言えば、人口増加率が減少し、人口増加社会から人口減少社会への曲がり角にいたからだと筆者は考えている。


昔から読んでいただいている方には何度も同じ例を出して恐縮だが、住宅需要を考えると人口が増加している社会では新築需要と建替え需要の両方が存在する。子供が一家に平均4人生まれれば世代を経るごとにどんどん家を新しく建てていかないと住む場所がなくなる。

しかし人口が減少している社会では基本的には建替え需要しかない。

つまり人口増加社会から人口減少社会への移行期は新築需要がごっそりとなくなる時期になるわけである。


しかし一旦人口減少社会となれば、建替え需要は基本的に人口に連動するので、人口が減れば建替え需要は減るが、労働人口も同様に減るので、労働者一人当たりの需要はあまり変動しなくなる。 同様のことは多くの耐久消費財産業で起こるだろう。


もちろん少子高齢化を基点とした人口動態の変化は、その変化を想定していなかったシステム(年金等)に対する打撃となり、様々な混乱をもたらすだろうから、日本経済にとって最大の問題の一つである事は間違いない。


ただ、日本が国際競争力を維持し続ける限り、それなりの対処は可能だろうし、悲観派の人が恐れるほどの悲惨な未来は来ないのではないだろうか?