みんなの党の予算修正案にみる 新自由主義とリフレ政策の関係

先の選挙で躍進を遂げたみんなの党は「新自由主義」的な思想をベースにしていると思われるが、同時にリフレ政策を推進していることでも知られている。

筆者にはこの組み合わせ(新自由主義とリフレ政策)が全くしっくり来なかったのだが、先日みんなの党が提出した予算修正案(以下)の過激さを見て、ある考えが浮かんだので書いてみる。

みんなの党、予算修正案まとめる 行革で歳出大幅カット

産経新聞 2月25日(金)19時31分配信
 みんなの党は25日、子ども手当廃止や国会議員と公務員の人件費削減などで歳出を大幅にカットした平成23年度予算案と予算関連法案の修正案を発表した。政府案が一般会計総額92兆4千億円に対し59兆8千億円の緊縮予算で、国債発行額も政府案の44兆3千億円に対し17兆7千億円に縮減した。現行40%の法人税率を20%まで引き下げて経済成長を目指す。


このニュースだけでは詳細までは分からないのだが、もし真剣にこれを目指しているのであれば小泉改革どころではない大改革であり、この改革と比べればリフレ政策を推進するかどうかは、微妙な(各種トレードオフの)さじ加減の問題に過ぎず、たいしたことでは無いとさえ言えそうである。


この修正案をもってみんなの党には失望したとの声もあるようであるが、むしろ渡辺氏にとってはこの予算案に込められた「新自由主義」への回帰こそが本道であり、リフレ政策の推進はその大改革への道筋を作るための単なる小道具に過ぎないのではないかとすら思える。


これだけの規模の緊縮財政を行えば経済への悪影響は必至であり、金融政策の手当て(金融緩和)が必要となる。 

英国も社会福祉の削減を含めた緊縮財政による財政再建を金融緩和と同時にやろうとしているが、ポンド安やコモディティ価格の上昇によってインフレ率が急ピッチで高まった事によって金融緩和継続への風当たりが相当強くなっている。 もし英中銀が早期に金利引き上げに踏み込まざるえなくなれば緊縮財政による財政再建が完遂できるかどうか難しくなるだろう。


では同じ事を日本がやればどうなるだろうか?

日本は今のところ円高によってインフレ率も抑えられているし、非価格競争力の高い輸出産業は金融緩和を行っても 為替安→インフレ悪化 のルートを辿りづらいという強みとなる。

もちろん金融緩和には国内外でバブルを誘発し、金融システムの安定を脅かすリスクは存在するが、そのリスクをとることによって「小さな政府」への改革と減税に必要な「財政再建」が達成されるのであれば「新自由主義」を志向する人間にとっては十分に取る価値のあるリスクということかもしれない。


もしみんなの党の真意がここにあるのであれば、それは一考に価する考えであるように見える。

そうなった場合、短期的な経済への悪影響を可能な限り相殺するために、日銀は対策を打たざる得なくなる。 これは日銀にとって本意ではないかもしれないが、政府が強い意志を持って改革を進めた場合、日銀はそれに併せて最善の手を尽くすことが使命であり、そうなれば割り切って量的緩和に踏み込む可能性もかなりあると思う。


ただ、筆者の考えでは「新自由主義」改革はデフレどころではない格差の拡大を日本にもたらし、多くの国民にとってはプラスとならないだろう。 そしてそのことは国民も薄々分かっており、「新自由主義」を前面に押し出した政党・政策は一定の人気は集めるかもしれないが、その広がりには限度があるはずである。
ところが、みんなの党は自民党や民主党の失態にうんざりしている世の中の空気を背景に、公務員たたきの爽快感?と、金融政策で経済が好転するという期待感を前面に押し出して、本来なら反「新自由主義」的な人々にも支持を広げようとしているように見える。 



ただ、筆者にはリフレ派の多くが望んでいる社会は「新自由主義」的な社会では無いように見える。
リフレ政策は政治思想ではなく、日銀に圧力をかけて貨幣の供給量を増やすことでマイルドインフレを起こさせるという一点で合意できれば十分との考え方もあると思われるが、やはり大本の部分でその政策によってどのような社会を目指すのかが一致していないのであれば、そのような相乗りが本当に自らが求める結果につながるかどうか保証の限りではないと思うのだが、みんなの党やそのブレーンである高橋氏を支持する人々は彼らの目指す社会がどのようなものか覚悟しているのだろうか?