英国インタゲの非インタゲ化?

英国は2010年第4四半期のGDPが予想を大幅に下回るマイナス成長だったが、一方でインフレ率は近々5%に到達する見込みらしい。


「英インフレ率、今後数カ月で5%近辺に上昇も=中銀総裁」
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-19198420110126


2010年第4四半期のGDPについては12月の大雪の影響もあるだろうが、それが無くても±0%程度だったということで、緊縮財政の影響も考えると当面景気が本格回復することは期待しづらく、下手するとスタグフレーションに突入しそうな勢いである。

ちなみにインフレ率5%くらい大したこと無いという意見も聞かれるが、インフレ率が3.7%だった12月時点で既に食料品は5.9%、衣料品は10%超の物価上昇率(年率)を記録している。1月は消費税(VAT)も上がったので更に上昇しているだろう。もちろん賃金は上がっていないので庶民に対する負担増は相当なものがある。 (英国では食料品にVATは掛かっていないが、輸送費等にVATが掛かるため、1月からは実際に食料品も広く値上げされている。)


この状況に対して英中銀の取れる手段は限られている、

現実問題としてこれ以上の金融緩和はインフレに苦しむ国民が許容しないだろうし、かといって金融引き締めができる経済状況ではない。


キング総裁もインフレ率が5%に到達しそうだとの見解を示したインタビューで

[ロンドン 25日 ロイター] イングランド銀行(英中央銀行)のキング総裁は25日、英国のインフレ率は向こう数カ月で5%に向けて上昇するとの見通しを示した。ただ、政策金利の引き上げに関するいかなる決定も、より長期的な目標に基づいて行われるとの立場を示した。  同総裁は英北東部のニューカッスルで会計士を対象に講演。その中で、インフレ率の継続的な上昇の背景には、輸入物価と原油価格の上昇、間接税増税などの一時的な要因があるため、過去1年間、利上げに踏み切らなかったことは正しかったとの認識を示した。  中銀はある時点で利上げに踏み切る必要に迫られるとの考えを示したものの、利上げの決定が総合的なインフレ率に基づいて行われることはない、と発言。  「経済を現在のぜい弱な状態から安定した状態に戻すためには、数カ月先を見越した、慎重かつ正確に判断された措置が必要となる」と述べた。

と述べているが、物価上昇が一時要因によるものだろうとそうでなかろうと英中銀としては当面はこれ以外とるべき道はなく、そうであればキング総裁としては物価上昇は一時的なものだ、と主張するしかないだろう。


但し、「物価上昇は一時的要因によるものだ」という説明は去年から使われ続けてきており、しかもつい先日までは4%に到達する恐れがある、という事だったのに既に今回は5%に切り上げられている。 最大の貿易相手であるユーロ圏のインフレ率も上昇の気配を見せており、今後どうなるかは予断を許さない。


ちなみにキング総裁の発言にある、「利上げの決定が総合的なインフレ率に基づいて行われることはない」という点は個人的には正しいと思うが、そうなると明示的にインフレ率の数値目標を定めた「インタゲ」の意味は何???って話にならないのだろうか。