高橋洋一氏の「「デフレ人口原因論」の間違い」論の不思議 (2)

先日高橋氏のTwitterでの発言について記事を書いたのだが、高橋氏がデフレ人口原因論批判の集大成的な記事 「日本のデフレは人口減少が原因なのか 人口増減と「物価」は実は関係がない」をDiamond onlineに書かれているのを見つけた。そこでは

 その理解のために、耐久財と非耐久財があるとして、耐久財の個別価格が下がる時をイメージする。ベースマネーが所与の場合、非耐久財の個別価格は上がる。その理由は耐久財が安くなる分、余裕ができて非耐久財を買うからだ。こう考えると、ミクロの個別価格の変動がマクロの物価に影響を与えないこともわかるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/10728?page=3

と、Twitterで書かれていた内容とほぼ同一の主張が展開されている。 


ところが、先日、高橋氏の以前の記事を読み返していたら、ワルラスの法則の原理について以下のように説明されているのを見つけた。

マネー量と物価の関係は、経済学では「貨幣数量理論」として知られている。それを別の言葉でいえば、マネーと非マネー(財・サービス等)の関係として、マネーが少なければマネーの超過需要になるが、それは同時に非マネー(財・サービス等)の超過供給になる。つまり、財・サービス等の超過供給ということは、モノがあふれてモノの値段が下がるデフレというわけだ。これは、ワルラスの法則としても知られている。

ワルラスの法則での、非マネーは、財・サービスだけではなく、資産市場も含まれる。シニョレッジが資産市場に入ると、財・サービス市場の価格は上がらずに資産バブルになるおそれがある。 
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1528

これは非耐久財の価格が下がった分が同じ「非マネー」でも耐久財の消費に回らずに資産の購入にまわればマクロの物価に影響しうるというように読める。

又、この仮説では、現預金は本来「マネー」に含まれるのだと思うが、デフレ下では金融資産と現預金の間に大きな違いはない。よって保留された消費が金融資産ではなく現預金にまわったとすれば、日本の現状についてもこの理論に沿った理解が可能ではないだろうか?


ではここで無理やりインフレを起こせばどうなるかと考えれば、現預金が不利になる一方で、「だから消費にまわそう!」とはならず、現預金から資産(株、土地等)にお金がまわり、高橋氏が懸念しているようにインフレ率がそれほど上がらない一方でバブルが発生する、ということになりそうである。


高橋氏自身も同記事で

むしろ、財サービスの価格を上げるためには、資産市場のほうには一定の歯止め措置が必要なくらいだ。

と指摘しているが、全く同感である。


しかしながら高橋氏が主張する量的緩和に人々に貯蓄ではなく消費を選択させる直接的な効果が存在するとは考えにくく、また、資産バブルを防止する本当に有効な手段は適切な金融引き締めしかないのではないかと筆者は考えており、高橋氏の指摘には全く同感するものの、結論は逆にならざる得ない。


高橋氏は資産市場に対する「一定の歯止め措置」について特に具体策を挙げていないがなにか有効なアイデアがあるのだろうか?