市場に任せていれば事故は起こらなかったのか?

先日のエントリー(今は「市場メカニズム」の出番ではない)で震災直後の対応策として市場メカニズムに頼ることの問題点を指摘したが、一方、そもそも政府が関与していたことが問題であり市場に任せていればこんなことはおきなかったというようなコメントも頂いた。


確かに今回の事例を見れば政府の関与に起因する問題は存在するだろうし、政府に対する批判が間違っているわけでは無いと思う(むしろ個々の指摘にはなるほどと思われるものも多い)。 有事が終われば原因は徹底的に解明されるべきであるし、そうなるだろう。


ただ、市場に任せていれば大丈夫だったかどうかは別問題のはずである。


そういう主張をする人はつい昨年起きたメキシコ湾での原油流出事故のことはもう忘れたのだろうか?


今回の事故は1000年に1度とも言われる大災害が引き金だったが、メキシコ湾の事故はコスト削減を意識したオペレーションに問題があったのではといわれている。


政府主導でも民間主導でも事故が起こるときには事故が起こる。 

それを政府、民間の差で説明できると考えるのは科学技術に対する軽視である。そして科学の粋を尽くし、万全のFail Safeを用意したと考えられるケースでもやはり事故は起きる。それは多くの場合、人間が行うことだから何事に於いても限界があるということ、リスクはゼロに近づけてもゼロにはなれないということを示しているに過ぎない。

リスクを低く見積もりすぎていたのでは無いかという疑念もあるし、その点については徹底した検証がされなければならないが、一般的に見て事前に十分予測可能であったとは言えないだろう。(もちろん常に他の人間よりリスクを大きく見る人はいるし、今回のその人たちの懸念が現実のものになってしまったのだが、、)


どちらにせよ少数の例で結論を出せるような話ではないが、今回の事故における政府主導の問題点を指摘しただけでは「だから市場に任せてればよかった」とは言えないのではないだろうか? 


(追記)
政府に任せても民間に任せてもリスクはゼロにできないのだから大水深での石油開発や原子力発電などはみんな止めてしまって、そのなかで可能な範囲で生活しようという意見はある意味筋が通っているが、それはそれで発展途上国を中心に大きな困難、困窮を生じさせることになる点は考慮しないといけない。