フィリップス曲線について (2)

前回の記事で紹介した英国の2008年から2010年までのインフレ率−失業率の関係を日本と米国についてもプロットしてみた。


量的緩和を実施した英米は共に量的緩和実施後は高失業率のままインフレ率が上昇し、逆Z型の推移を示しているのに対し、日本は一見すると単一曲線(フィリップス曲線?)上を行き来しているように見える。


日米英の失業率に注目し、2008年1月の失業率と期間内の最悪期の失業率、及び最新の失業率をまとめたのが下表である。量的緩和を実施した英米両国と比べても日本は失業率が底を打った時期も早いし改善率もむしろ高い。


但し、繰り返しになるが筆者はこれらのデータをもって英米の量的緩和政策が失策だったという主張をしたいわけではない。

リーマンショック後の英米のようにバブル崩壊後の金融不安がインフレ率の急低下と失業率の急上昇を引き起こしているような緊急時には非伝統的金融政策も駆使してデフレスパイラルを食い止める必要があったのに対して、直接的には被害の少なかった日本ではインフレ率こそ世界的な経済情勢に影響されて一時的に低下したものの、相対的には傷が浅く、危機を引き起こした英米等が問題を処理して世界的な金融危機がある程度収束すれば自然と回復する状況だったと考えられる。

つまり英米が非伝統的な金融政策によって金融危機に対処し、一方で日銀が伝統的な金融政策の範囲内で金融緩和を継続したのは基本的には正しい判断だったというのが筆者の考えである。 (そして量的緩和を実施して金融危機を回避したとしてもバブル崩壊の傷自体が完全に癒えた訳ではないので、英米両国の失業率等はなかなか改善されないということになる)


(追記)
ついでにその他主要先進国(独仏伊加)についてもプロットを作成した。


フランス、カナダは英米タイプの推移(逆Z)を見せているが、ドイツは日本と同様、インフレ率は上下したものの失業率への影響は少ない。 ユーロ内ではフランスがより積極的な金融緩和を求めていたが、これも世界経済への見方がどうこうという話ではなく、自国経済の状況に基づいた要求であったことが分かる。