家に帰るまでが遠足、金利正常化するまでがリフレ政策

日本人で「家に帰るまでが遠足です」という台詞を聞いたことがない人はいないだろう。 確かに遠足がどんなに楽しいものであっても、家に帰り着くまでに交通事故にあってしまっては台無しである。 

ちなみにおやつは300円まで、バナナがおやつに入るのかどうかは未だに分からない。


それはともかく、「家に帰るまでが・・・」というのはリフレ政策にも同じことが言えるのではないだろうか? この場合、リフレ政策にとっての「家」は金利正常化のはずである。


米国で失業率がわずかに下がったり、FRBの利益や国庫納付額が過去最高を記録したのを見て、QE2(量的緩和)の成果とする意見もあるが、QE2の本当の成果が分かるのは少なくとも金利の正常化を果たした後の筈である。


財政政策や量的緩和政策ではその規模を拡大している期間中はプラスの効果があらわれがちであるが、それらの政策で本当に問題なのは出口戦略である。


高橋洋一氏のようにシニョレッジを重視し、日銀の国債引き受け自体を一種のシニョレッジと捉える場合、量的緩和を拡大している間はどんどんシニョレッジが積みあがるが、引き締め段階に入り、国債を売却すれば、売却額がすべて損失となる。(ちなみにシニョレッジによる効果は即効性が高いものではなく、目的(インフレターゲット等)を果たせそうだと判断した時点では殆どの場合行き過ぎており、ちょうど良いところでピンポイントで止めることは困難である)


米国のQE2の場合は、未だQE3の可能性が噂されている段階で、市場はFRBの動きを見守っている所であるが、QE3が行われないことがはっきりすれば一気にそれまでの流れが逆転し、FRBが過去最高の損失をたたきだす可能性も十分にある。


英国はすでに緊縮財政という出口戦略を強いられており、その一部としてVAT(消費税)の引き上げや大学の授業料の値上げを行った。この緊縮財政政策が貫徹されれば、英国債の金利も下がり、インフレ率もターゲット圏内(1−3%)にいずれ戻ってくるかもしれないが、戻ったからといってすぐにVATや授業料がもとに戻ることはないだろう。英国民は(量的緩和+引き締め)のサイクルを一つ通過することによって当面の間(あるいはほぼ恒久的に?)そのつけを払い続けることになったわけである。


「家に着くまでが遠足」という名文句の背景には子供が家に帰るまでが学校の責任、という意味があるのではとの指摘もあるが、政府・日銀もリフレ政策を行う場合には金利正常化までを一体として責任を持つ必要がある。


行きはよいよい帰りは怖い、怖いながらもとおりゃんせとおりゃんせ、では困るのである。