2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

分かる人にしか分からない金融政策は機能するのか?

最近の二つのエントリー(1,2)に関して、コメント欄でerickqchan様とかなり色々と議論させていただいた。erickqchan様は以前からサムナーの論文やブログを読みこんでおられ、むしろ筆者の誤解に対する様々な指摘を頂いたという方が適切かもしれないが、…

地方分権はどこまで正しいのか  - 既得権 vs 優先権

地方分権について考える際の切り口は数多くあるが、現在を過去に起きた文脈の中で捉えるなら日本が中央集権国家として現在の国の形を作り上げてきたことは無視できないはずである。(特に明治維新以降) 確かに日本の現状は「都市」と「地方」に分けた場合、…

なぜ地方はその地域の税収だけでやっていけないのか?

前回に続き地方分権について少し違う切り口から考えてみる。 日本の都道府県より人口が少なくかつ豊かな国はたくさんあるのになぜ日本の地方はその地域の税収だけでやっていけないのだろうか? 恐らくその理由の一部は税制を独自に決められないことにある。 …

サムナーの名目GDP目標がおそらく機能しない理由

先日のエントリーのコメント欄でerickqchan様とサムナーの名目GDP目標政策に関連する議論をさせていただいたのだが、コメ欄では十分に書ききれなかった筆者の同政策に対する根本的な疑念をまとめてみた。 サムナーの名目GDP目標政策はインフレターゲットの進…

「年功下落の時代」が来る??

超有名ブログである「Chikirinの日記」で「年功下落の時代へ!」というエントリーが話題となっている。 簡単に言うと人口動態を考えると今後社会に出ていく若者達は給与右肩下がりの「年功下落」時代を過ごすことになるというお話である。 インパクトのある…

リフレ派・反リフレ派を勝手にチーム分けしてみた

ふと思いたってリフレ派と反リフレ派(に対する筆者の印象)を以下のように勝手に分類してみた。 重ねて言うがあくまで筆者の印象を分類しただけである。 又、純粋に経済学的な観点からリフレ政策について研究・考察している人については、(背景には経済右…

英国版リフレ政策の現在(カンタンな解説)

本日(3月23日)は英国の2011年度予算案の発表日で、各種予算措置と共に今後の経済成長率見通しの発表があり、2011年の経済成長率は昨年11月の見込みから更に0.4%引き下げられて1.7%となった。 実際のところ英国の経済状況はこの数字から受ける印象よりも更…

リフレ政策の正体 (カンタンな解説)

前回に引き続き「動的AS-ADモデル」を用いての考察をもう少し続ける。尚、erickqchan様よりこの動的AS-ADモデルの説明箇所がCowenとTabarrokによるマクロ経済学の教科書のサンプルとして公開されているのを教えていただいたのでリンクを貼っておく。非常に面…

日本型デフレの正体 (カンタンな解説)

これまでのエントリーではどちらかと言うとミクロ的な視点での考察が多かったが、今回は「動的AS-ADモデル(参照1)」で使われる図を用いて筆者が日本型デフレの正体と考えているものを少しマクロ的な視点から説明してみたい。(素人のマクロ理解などに興味…

インフレ懸念が高まる中でのリフレ派の主張について

先日のエントリーで有事においても「平常運転」なリフレ派の先生方の主張を紹介したが、飯田教授は震災後に起こりうる状況を踏まえて少し違う形でリフレ政策の推進を主張されている。 インフレによるデフレに警戒せよ! 飯田泰之 http://synodos.livedoor.bi…

震災後の円高の背景について

震災直後から円は急騰し、本日は76円台をつけ、戦後最高を記録した。 これだけの急激な変動は投機筋の思惑によるところが強いと考えられる。 そしてこの事態に為替介入の準備は既に万全との見方もあり、既にそれを警戒した動きもあるようである。 非情な投機…

市場に任せていれば事故は起こらなかったのか?

先日のエントリー(今は「市場メカニズム」の出番ではない)で震災直後の対応策として市場メカニズムに頼ることの問題点を指摘したが、一方、そもそも政府が関与していたことが問題であり市場に任せていればこんなことはおきなかったというようなコメントも…

「有事」と「平時」 #edano_nero

今回の「有事」においてその対応で最も評価を上げている政治家は枝野官房長官だろう。 正直なところ菅政権における存在感はかなり希薄なものだった印象が強いが、少なくともこの数日の記者会見での対応は十分に評価できるものであったように思う。もちろん文…

今は「市場メカニズム」の出番ではない

今回の巨大地震と津波で被災された皆さまには心からお見舞いを申し上げますと共に亡くなれた方々のご冥福をお祈りいたします。又、このような事態に至ってもあらゆるレベルであらゆる人々がその職務を全うすべく死力を尽くされていることは遠く日本を離れて…

リフレ論は本当にマクロ経済学の理論なのか? (コメントへの返信)

ブクマ及びコメント欄で頂いたコメントへの返答をまとめてみました。 しかし筆者の文章はコメントへの返信すら確かに「冗長」だな、、、、 API様 個別価格の変化については一般均衡理論もしくは価格メカニズムを勉強すればわかることだと思うけど。ノビーで…

リフレ論は本当にマクロ経済学の理論なのか?

最初に誤解の無いように書いておくと、本来のリフレーション理論は言うまでも無くマクロ経済学の理論である。 但し、一部のリフレ派が唱えているリフレ論の多くは本質的にはマクロ理論というより還元論と陰謀論のミックスに過ぎないというのが筆者の理解であ…

「日銀陰謀論」の正体

ある経済評論家なり大学教授なりが日銀の政策を批判した場合、どちらが支持されるだろう? その批判が高度に理論的、学術的なものであれば、一般人の理解の範囲を超えているはずなので、余程その人が経済学者として高名な場合や、学会のコンセンサスが日銀批…

イギリスはインフレ? → インフレです! (2)

一応、内容についても検証してみる 見過ごせない記事があった。朝日新聞2月11日付朝刊に載った「英インフレ、生活直撃」という見出しの記事だ。冒頭、「世界的な食料や原油の値上がりで英国のインフレが進んでいる。昨年12月は消費者物価上昇率が前年同月比…

イギリスはインフレ? → インフレです!(訂正)スタグフレーションかもしれません・・・・

最後に実際のデータを少し見てみる。(といっても以前のエントリーで使用したグラフの使い回しであるが、) まずリーマンショック前の2008年1月から2010年末までの日英両国のインフレ率をプロットすると以下の通りとなる。 http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20…

イギリスはインフレ? → インフレです!

週刊現代に連載されているドクターZは知っているというコラムに「イギリスはインフレ?」という記事が載っていた。氏によると「金融緩和をした英国はインフレで苦しんでいる。」というのは事実ではなく、日銀のキャンペーンに乗せられたミスリーディングな記…

アダム・スミスの二つの「見えざる手」について (補足)

前回のエントリーに対してwhat a dude様からアダム・スミスの国富論についてコメントをいただいた。 アダム・スミスは国富論「労働の賃金について」で労働者と資本家の間の交渉上の地歩の格差について明確に言及しており、労働市場にワルラス的な均衡が必ず…

自由主義経済はどこまで正しいのか? - アダムスミスのもう一つの「見えざる手」

現代においてアダム・スミスがその著書「諸国民の富の性質と原因の研究(国富論)」の中で「神の見えざる手」として描いた市場メカニズムとその効率性を根本から否定する人間は多くないはずである。 しかし、スミスが考察したのは仮に全ての人間が利己的であ…